採血は単なる検査ではなく患者の身体的な状態を確認し、不安や痛みに配慮したコミュニケーションが求められる医療処置です。
この記事では、採血時に血管が出ない原因や見えにくくなる理由を解説し、より快適でスムーズな採血にするための対策を具体的に紹介しています。
採血技術を磨くことは、患者ケアの質を高めるだけでなく医療チーム内からの信頼度も高めます。ぜひ最後まで読み進めて参考にしてくださいね。
採血時に血管が出ない原因①体質や年齢の影響

採血の時に血管が見つけにくい、これは多くの看護師が経験していることでしょう。なぜなら、採血の時に血管が出ない原因は、患者の体質や年齢といった個別の要因が複雑に関係しているためにおこる現象だからです。血管の太さ、位置、硬さには大きな個人差があり、生まれつきの特徴や生活習慣、その場所や環境によっても変化します。
体質の影響
血管の見えやすさは体質によって大きく異なります。皮膚の厚さ、筋肉量、皮下脂肪の量、血管の太さなどさまざまな個人の要因に関係しています。
たとえば、皮膚が薄い人や筋肉質の人は血管が表面に近いため浮き出やすく、採血時に見つけやすい傾向があります。
一方で、皮下脂肪が多い人や血管が細い人は見つけにくいことがあります。脂肪組織が血管を覆い隠すため、皮膚の表面から血管が見えづらくなるのです。また、細い血管は当然ながら目視で確認しづらく、触診でも感じ取りにくいため、採血の難易度が上がります。
体内の血流や循環の状態も血管の見えやすさに影響します。血液循環が悪い場合、血管内の血液量が減少し、血管が収縮するため、皮膚表面から沈み込んでしまって浮き出にくくなります。採血時には、運動不足、脱水、ストレス、寒冷環境などで引き起こされる循環不良がないか注意しましょう。
対策
皮下脂肪が多かったり血管が細かったりして、採血が難しい患者には、適切な準備と技術で、スムーズな採血を行うことができます。
採血前には、
- 温めること
- 水分補給
- リラックスを促す
など血管の拡張を促すケアを行いましょう。
採血時には
- 照明を明るく
- 指先で優しく触診して血管の走行を把握
- 血管の太さや深さに合わせて穿刺角度や針の太さを調整する
などして確実に穿刺できる確率を高めましょう。
超音波装置を利用することも選択肢としてあります。
患者には、採血の目的や手順を分かりやすく説明して不安を軽減し、リラックスしてもらうことが大切です。痛みについても正直に伝え、痛みを最小限に抑える工夫を伝えましょう。
皮下脂肪が多い方や血管が細い方への採血は、根気と丁寧さが求められます。
患者の状態に合わせて、適切なケアを行い安全でスムースな採血を行いましょう。
年齢の影響
年齢は、採血時の血管の状態に大きく影響します。高齢の患者さんは血管が硬くなっていたり、蛇行したりしていることが多く、採血が難しい傾向にあります。そのため、ゆっくりと丁寧に血管を探ることが大切です。
若い年齢層でも、血管が細い人や皮下脂肪が多い人は血管が見つけにくいことがあります。これは健康上の問題ではないので心配ありませんが、採血の際には血管の状況をしっかり確認するスキルが求められます。運動による血液循環の改善と血管の柔軟性向上により運動習慣のある人は血管が見つけやすく、運動不足の人は血管が見つけにくい傾向があります。
対策
高齢者は、血管がもろく動きやすいです。そのため、ゆっくりと丁寧に血管を探し、穿刺前にはしっかりと固定することが大切です。また、温めると血管が拡張し、浮き出やすくなるため探しやすくなります。
若い患者でも、血管が細い方や皮下脂肪が多い方は、血管が見えにくく穿刺が難しい場合があります。照明を明るくしたり、指先で優しく触診したりして根気強く血管を探しましょう。
共通して大切なことは、患者の状態に合わせて適切なケアを行うことです。患者の不安を取り除き、リラックスできる環境を作ることが効果的です。経験豊富な看護師に相談したり、超音波装置を活用したりして患者の苦痛を最小限にしましょう。
採血時に血管が出ない原因②手の冷え

採血のときに手や腕が冷えていると血管が収縮してしまい、針を刺す血管の位置が確認しにくくなる問題がおこります。これは人体の血管が温度変化に敏感に反応するためです。特に寒い環境や手足が冷えている患者には顕著になります。
対策
手の冷えで採血が難しくなっている場合には、手や腕を温めるのが効果的です。具体的には、カイロ、温タオルや湯たんぽで温めたり、暖かい服の着用や手浴を促しましょう。また、採血の順番を待つ間、腕を心臓より低い位置に保つことも効果があります。重力の作用で血液が腕に集まり血管が膨らんで見えやすくなるので試してみてください。
そのほかにも、採血前にゆっくりと腕を動かしたり手首や指先のマッサージをしたり、血液の循環を促進するケアは血管を拡張させます。温かい飲み物を飲むことも体内から血管を温めるので効果的です。冷えのために血管が見えにくいときは、いくつかの対策を組みあわせて行いましょう。
採血時に血管が出ない原因③脱水状態

脱水状態は、体内の水分が不足している状態で血管が見えにくくなる要因の一つです。体内の水分が十分でないため血液量が減少して血管が細くなります。
対策
脱水で血管が出ないときは、十分な水分摂取を促しましょう。また、採血の前日から当日にかけては、患者に水分補給を心がけることを伝えましょう。ただし、過度な水分摂取には注意が必要です。適度な水分量を保つことが大切だということを付け加える丁寧な説明がいいですね。カフェインを含む飲み物は利尿作用があるため、水やお茶、 ハーブティーなどをおすすめして採血に備えてもらいましょう。
採血時に血管が出ない原因④緊張や不安

緊張や不安は、血管を見えにくくする原因になります。採血のような医療処置で感じる緊張や不安な感情は、多くの人が経験することです。人は、緊張状態になると体内で交感神経系が活性化されて血管が収縮します。そのため、普段なら確認できるはずの血管も、採血の直前に見つけにくくなってしまうのです。これは、人体の自然な生理反応の一つですが、採血を行う医療従事者にとっても、患者にとってもストレスになってしまいますね。
対策
緊張や不安で血管が見えにくくなっている場合にはリラックスできる環境をつくりましょう。交感神経の働きが抑えられ、血管が自然に拡張して、血液の流れがスムーズになります。具体的には、深呼吸や軽いストレッチ、気持ちを落ち着かせるための軽い会話などが効果的です。
特におすすめなのは、呼吸を整えることです。ゆっくりと深い呼吸を繰り返すことで、自律神経系のバランスが整い、心拍数が落ち着き、血管の状態が改善されます。さらに、患者がリラックスした状態で採血に臨めるように丁寧なコミュニケーションを心がけましょう。
医療スタッフの採血技術の重要性
最後に、採血はスタッフの技術がとても大切だということを強調したいと思います。特に血管が見つけにくい採血の場合、経験豊富で熟練されたスキルが頼りになります。
- 血管が見つけにくい状況でも、適切な判断と対応ができる力
- 指先で血管の位置を正確に見つけられる触診の技術
- 体の血管の位置をよく知っていて患者一人ひとりの特徴を把握できる知識
- 患者の体質や状態を考慮して最適な採血方法を選べる柔軟さ
上記のような熟練した採血技術と豊富な経験を持つスタッフは、難しい状況でも患者に最小限の負担で採血ができます。患者の不安を和らげる高いコミュニケーションスキルもあれば、患者のリラックスと血管を拡張させる効果も期待できます。必要に応じて超音波装置などの補助機器を使うなどの適切な判断も行えるでしょう。
血管が見えにくい患者の採血は、より安全で効率的なスキルが求められます。患者の安全と安心を守るためにも、医療の質を高めるためにも、採血の経験を積み重ねましょう。
採血時に血管が出ない原因のまとめ
採血時に血管が出ない状況に直面したときには、その原因を分析して対応できるスキルが大きな強みになります。この記事の内容を参考にしながら、採血の成功率を上げ、患者の不安や痛みを軽減することができれば、業務全体の流れがスムーズになります。さらに、患者のケアにより多くの時間を充てることができるようになったり、チーム内での信頼を高められたりします。採血スキルを磨き、看護師としての自信を育みながらより質の高い医療サービスの提供につなげましょう。