ドライマウスは、現代病とも言われ2022年時点で約800万人、予備軍は約3000万人と推定されると言われてます。ドライマウスを発症する人は高齢者に限らず、食生活の変化に伴い、近年増加傾向にあります。
ドライマウスに有効な口腔保湿剤は、いくつかのタイプがありますが、今回はスプレータイプを中心にご紹介します。
1.口腔保湿剤とは

唾液とも呼ばれ、口の中の水分量を保ち、ドライマウスの症状を緩和します。その種類にはスプレータイプ・ミストタイプ・ジェルタイプがあります。目的に応じて使い分けましょう。
スプレーやミストタイプは、素早く保湿剤を口腔内に広げることができます。ボトルやアトマイザーに小分けすれば手軽に携帯できます。仕事や外出中にも乾燥を感じた時、サッと使用することができ大変便利です。しかし持続性はジェルタイプに劣ります。
マウスウォッシュタイプはうがいができる人が対象です。薄めて使う希釈タイプとそのまま使えるタイプがあります。口の中に満遍なく保湿剤を行き渡らせることができます。しかし、吐き出す必要があるため使用するには場所を選び、持続時間も限られます。
2.ドライマウスの原因と影響
ドライマウスの原因は唾液の分泌量の低下です。
唾液分泌の減少を引き起こす疾患には、糖尿病・腎臓疾患・高カルシウム血症・シェーグレン症候群などがあります。
シェーグレン症候群は、涙腺や唾液腺の分泌霜害を主症状とする外分泌腺の慢性炎症疾患で、自己免疫疾患に分類されます。関節リウマチや全身性エリテマトーデスを合併していることが多く、40〜60代の女性に多い疾患です。
また、ドライマウスをおこす薬剤も多く、抗ヒスタミン薬・抗不安薬・抗うつ薬・睡眠薬・抗コリン薬・骨粗鬆薬・降圧剤・抗不整脈薬、一部の胃薬や抗がん剤などがあります。また、服薬する薬の数による影響もあります。5種類以上服薬している人は、4種類以下の人に較べてドライマウスの発生率が顕著に高くなっています。
その他にも飲酒や喫煙・カフェイン摂取、ストレス、筋力低下も原因の一つです。筋力低下は、咀嚼力を弱めるため唾液腺が刺激されにくくなるからです。
唾液量の減少は口腔内汚染の原因となり、様々な口腔機能にも影響をもたらします。放置すると、嚥下機能や話すことにも影響しオーラルフレイルを引き起こします。
ドライマウスの症状を軽く見ず、全身性の疾患との関連性についてもアセスメントすることが重要です。
3.ドライマウスを予防するために

ドライマウスを予防するためには、日頃から口腔機能の維持に努める必要があります。
①生活習慣の改善
よく咬むことで唾液腺が刺激され唾液分泌が増えます。また、食べるために必要な筋肉(咀嚼をする際には、咀嚼筋・咬筋・側頭筋・内側翼突筋・外側翼突筋・舌骨上筋など)が鍛えられ、その筋力維持に繋がります。これらの筋肉は表情筋との影響も深いので、他者との交流を持ち続けることにおいても大切な筋肉です。
口腔乾燥に影響するカフェイン・アルコール摂取を控え、できれば禁煙することが望ましいです。
暴飲暴食を避け、適度な運動や十分な睡眠など生活習慣を整えることは、ストレス軽減だけでなく、ドライマウスの原因となる基礎疾患にも有益です。
②口腔環境を整える
歯磨きだけでなく歯間ブラシやデンタルフロスを用いて口腔内の清潔に努めます。じっくり歯のお手入れをすることは唾液分泌にも有効です。
口腔周囲筋のリハビリである、顔面のマッサージや口唇、頬、舌の体操を行い、食べ続ける口を維持します。
口腔乾燥が気になる際には口腔保湿剤を使用します。
③定期的な受診
上記の基礎疾患があり薬を服薬している場合、その内容の見直しについて主治医に相談しましょう。
4.口腔スプレーの選び方

用途によって使い分けます。口腔ケアの仕上げとして使用するならマウスウォッシュです。
マウスウオッシュは、口腔ケア時にスポンジやモアブラシに水分を含ませる様に使用することもできます。
外出先など手軽に使用するならスプレータイプです。ノズルが付いていると、噴霧部位の細かな調整が可能です。
看護・介護で手軽に乾燥予防に使用する際にもスプレータイプは便利です。その際、口腔ケアがしっかりできていることが重要です。強固な汚染がある場合には口腔保湿ジェルで汚れを除去してから、保湿維持のために使用してください。
製品により成分内容が異なりますが、筆者は口腔内粘膜に刺激を与えない無添加・低刺激性のものから、香りや味など本人のお好みで選択しています。
いくつかの口腔保湿ウオッシュ・スプレーとその成分について以下にご紹介します。マウスウオッシュや口腔保湿スプレーはドラッグストアや大きな病院の売店、介護ショップなどで販売されています。Amazonや楽天など、インターネット通販を使用すると、種類も豊富です。
コンクールマウスリンス
成分:ソルビトール・キシリトール・アスパルテーム・アセスルファムK・スクラロース・グリセリン・ポリアクリル酸Na・カルボマー・PEG-50・水添ヒマシ油・PEG-75・ラウロイルアスパラギン酸Na洗浄剤・メントール・ホエイタンパク・グリチルリチン酸アンモニウム・セチルピリジニウムクロリド・ラクトフェリン・アロエベラ液汁末・デキストリン・マンニトール・ヒトオリゴペプチド-1
クリンスマイル 薬用口腔保湿ミスト
成分:塩化セチルピリジニウム・濃グリセリン・プロピレングリコール・マルチトール液・キシリトール・グリセリン脂肪酸エステル・クエン酸・クエン酸ナトリウム・塩化ナトリウム・安息香酸ナトリウム・香料
うるおいミスト無香料
成分:水・グリセリン・キシリトール・トレハロース・マルチトール・ヒアルロン酸Na・グルコシルセラミド・αーグルカン・チャ葉エキス・カキタンニン・クマイザサ葉エキス・マルトデキストリン・カンテン・セルロースガム・クエン酸・クエン酸Na・炭酸Na・カプリル酸グリセリル・ミリスチン酸ポリグリセリル‐2・ミリスチン酸ポリグリセリル-10・安息香酸Na・ソルビン酸K
オーラパール マウススプレー
成分:水・グリセリン・PG・PEG-8・ポリクオタニウム-51・リン酸2Na・クエン酸・クエン酸Na・グリチルリチン酸2K・セリン、チャ乾留液・エタノール・PEG-60水添ヒマシ油・キシリトール・ヒドロキシアパタイト・安息香酸Na・シメン-5-オール・セチルピリジニウムクロリド
アクアバランス 薬用マウススプレー
成分:l-メントール・グリセリン・PG・POE(60)硬化ヒマシ油・納豆菌ガムキシリトール・塩化セチルピリジニウム・
まとめ
ドライマウス対策としての口腔保湿剤は、マウスウオッシュやスプレータイプが使いやすいです。介護が必要な方に使用する場合は、口腔環境によりジェルタイプを用いて補佐的にマウスウオッシュやスプレータイプを使うことができます。ドライマウスの症状に対しては、先ずは生活行動の見直しを行うことが重要です。心身の健康を口の健康づくりから始めてみるのはいかがでしょうか。