本島から離れ、自然に囲まれた離島での暮らし。
看護師のスキルを活かして働いてみたいと思っても、実際の仕事内容や生活はイメージしづらいかもしれません。
今回は離島で活躍する看護師に、看護の仕事や日々の暮らしについてインタビューしました。
広島県呉市の大崎下島(おおさきしもじま)に住み、訪問看護をしながら古民家再生まで行う島ナース、長谷川晶規(はせがわあきのり)さんをご紹介します。
この記事はYouTubeの「ナース図鑑LIVEnow」のインタビュー動画をもとに、ナースLabのライターが作成しています。
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訪問看護ステーション開設時の管理者として島へ移住と古民家の手入れ
―離島ではどのような仕事をしていますか?
私が勤務するNurse and Craft合同会社のメンバーとして、訪問看護ステーションの管理者をしています。
私が住む大崎下島には近くに4つの有人の島があり、この5つの島で訪問看護を広げる活動をしています。
島の人たちはもともと訪問介護のことは知っていたんですが、訪問看護はあまり知られていなかったんです。まず看護と介護の違いが理解されていなくて。
だから地域医療の関係者や島の人たちに、訪問看護についての説明をしながらケアマネージャーと連携して利用者さんの支援を行っています。
―看護師以外の仕事もしていますか?
地域の社団法人の活動として、古民家を借りて掃除をしたりリノベーションをしたり、人が暮らしやすいようにするお手伝いをしています。
移住してきて8か月になりますが、今は6件目の家に住んでいます。いろんな家を移り住みながら掃除・リノベーションをして、次に来た人にその家を渡す。そして自分は次の家を開拓していく、という流れです。
最近は畑仕事も始めたんですよ。島の人に教えてもらいながらだんだんと形になってきて、今では収穫ができるまでになりました。以前は興味なかったんですが、すごく楽しくなってきましたね。
看護師から会社員への転職、そして離島へ
―長谷川さんのこれまでの経歴を教えてください。
大阪で看護師としてICUとER兼務で4年間勤務していました。毎日忙しく働く中で「このままでいいのか?」、「病院以外でも働いてみたい」という気持ちが出てきたんですね。
それで思い切って別の業種に転職したんです。約2年の間に2つの会社で働きました。充実していたんですが、ある時自分が少し疲れていることに気が付きました。
会社員としての制約で出来ることの限界を感じたのと、ベンチャー企業で新しいことへの挑戦を続けたのが原因だったと思います。
―離島へ移住するきっかけはなんですか?
以前から離島や田舎に住んでみたいと思っていたんですよ。実際に移住するのは定年した後だと考えていましたが、悩んでいるうちに今でもいいかなと気持ちが変わったんです。
今の会社と出会って、理念に共感したことも大きかったですね。瀬戸内海はもともと好きな場所だったので、見学をさせてもらって移住を決めました。
訪問看護の壁と発想の転換
―離島の訪問看護を始めて驚いたことはありますか?
島の人たちの自立度がすごく高いことに驚きました。90歳、100歳でも一人で歩くことができる方が多いんですよ。
病院で働いていた時は、60歳、70歳でも杖などの補助具を使っている方をたくさん見てきました。でも島の人たちは、もっと高齢でもピンピン歩いてるんです。
畑仕事をしていて筋肉量が違うのかもしれないし、人の世話になりたくないっていう思いが強いのも理由としてあるかもしれません。
―困ったことや悩んだことはありますか?
訪問を断られた時は悩みましたね。困ってなければいいんですが、一緒に関われたらもっとよくなるんじゃないかなって思っていました。それでもかたくなに断られて、どうするべきかとすごく悩みましたね。
そこで考え方を変えて、訪問看護師ではなく長谷川という島の一員として関わっていくことにしたんです。家の前を通ったら話しかけて、元気かな、大丈夫かな、と様子をうかがうようにしています。
―離島での訪問看護のやりがいはどんなところですか?
夜間含め24時間対応しているので、離島のような他に頼るところがない場所ではすごくプレッシャーに感じます。
でもそれが逆にやりがいにもつながっていますね。
医療職も島の人も癒される環境づくり
―今後のビジョンを教えてください。
島の高齢の人たちが、最期までイキイキ暮らせるような環境を作りたいですね。
例えば畑に行きたくても行けない人には、家の庭に畑を作る。そうすれば看護師と一緒にリハビリを合わせた畑作業ができます。
お花が咲く場所を作れば「おじいちゃんとデートに行きたい」と少女のような気持ちになってもらえるかもしれません。そんな場所を作りたいですね。
医療職でここにいるただDIYする人ではなく、どうやったらその人たちが最期まで生きがいを持って楽しく島で暮らせるかを考えていきたいです。
―同じ医療職の方にメッセージをお願いします。
医療者は仕事に疲れている人が多いと思うので、ここにきて一休みすれば気分転換になると思います。
過疎地を知りたいという人には、実際に来てもらって島の生活を体験してもらうこともできます。
研修の場所として使ったり、管理者が集まって普段の悩みを話したりしてもいいですね。
訪問看護を始めてみたい人が「ここでしっかり働きたい」と思える環境を一緒に作っていければ嬉しいです。
離島の暮らしや訪問看護に興味のある方は、長谷川さんのFacebookページで直接ご質問してくださいね。
本人から許可いただいています!
インタビュアー:斎藤利江