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訪問看護ってどんなお仕事?経験者が伝える転職前に知っておきたい5つのこととは

訪問看護に興味はあるけれど、転職を迷っている人は意外に多いかも知れません。一人の訪問が「大変そう」「難しそう」というイメージがあるのでしょうか。でも実際は誰でもチャレンジできる分野だと感じます。
この記事では、訪問看護にチャレンジしてみたいと考える人に向けて、実際に訪問看護で働いていた筆者の経験談をもとに仕事内容や役割、向いている人について紹介しています。

目次

訪問看護師はどのような仕事をしているのか

訪問看護師ってどんな仕事をしているんだろう。病院で勤務していると、在宅のことはよくわからないという意見をちらほら聞きます。学生さんに在宅看護のお仕事もあるよと話して「どんなことをするんですか?」と聞かれたこともあります。

訪問看護の仕事は、具体的には以下のようなことを行なっています。

  • 健康状態のアセスメント
  • 療養生活上のケア
  • 医療処置
  • 服薬管理
  • 病状悪化の防止やリハビリ
  • ターミナルケア

訪問する期間は病院のように入院期間とは異なり、長くなります。事務的には契約が終わるまでですが、状態に応じて休止する、訪問回数を変更するなどを経て最期を看取るまで続くことが多いです。胃ろう増設をしたした利用者さんは、退院直後に毎日訪問していましたが、通所サービスの利用が開始されたことで、3週間後には週1回状態観察のための訪問30分に移行することができました。褥瘡の悪化に伴い、一時的に毎日訪問することもありました。

対象者は小児から高齢者まで、領域もさまざまです。精神科や小児科での訪問看護は、実際に訪問して徐々に病状や生活状況が見えてくることがあります。最初の少ない情報から生活の全体像を掴みつつ、ご本人やご家族が望む生活にはどんなケアが必要なのか、をケアマネジャーらと組み立てていく力が必要になります。

1日の訪問スケジュール

そんな訪問看護の一日の流れをお伝えします。私が経験したステーションはどちらも8時半頃集合でした。実際は9時~18時勤務での募集が多いように感じます。出勤後に電話やメール、前日の急変対応や当日訪問者のカルテチェックを行い、簡単な確認事項を共有します。緊急訪問が入ったり、状態の変化で対応が変わることも起こるので、メンバーのスケジュールを確認しておくことで、動きやすくなります。

ご家庭への訪問は9時以降でした。遅刻をしないように、渋滞や悪天候時には気を遣いました。1回の訪問は短ければ30分、長くても1時間半なので午前中に1件〜3件回ります。午後からも2〜3件程度です。バイタルサインや特に変化があった内容についてはその場で記録します。書き切れなかったことは訪問後、次の訪問までの時間を活用したり、事務所に帰って行います。訪問介護や訪問入浴、デイサービスなど他のサービスとの情報共有のために、準備されたノートへの記録も大切な業務の1つでした。

在宅でも突然の熱発や慢性疾患の急変は当然起こるので、スタッフと連携しながら臨時で訪問に入り、点滴指示に応じることもありました。訪問終了後は事務所に帰って、他の関係機関への報告を行います。24時間側にいられないので、関わる職種がどのようなサポートをすれば、その方の生活が成り立つのかを考えることも訪問看護師の重要な仕事です。

もちろん、毎日がスケジュール通りというわけにはいきません。急な入院では、訪問後にサマリー作成が必要です。その他突発的な業務として、退院前のカンファレンスや定期的なサービス担当者会議への出席、主治医との病状についての面談などがあります。

訪問看護に特徴的な業務には、毎月月末に訪問看護報告書と訪問計画の作成があります。介護報酬を得るために、訪問看護の実績を集計しケアマネジャーに提出する作業もあります。

病棟との違い

病院と大きな違いは、利用者さんの毎日の変化を確認できない点です。そして限られた時間でしか関わることができません。在宅では決められた訪問曜日に一定時間の中でケアを提供します。介護保険では、(20分)30分、60分、90分の区分があり、介護度に応じて利用できる点数が決まっています。その中でケアマネジャーが立案したサービス計画に沿って、訪問看護を提供することになります。独居の方には生活支援が優先されるため、訪問看護に十分なサービスを使うことができないケースもあります。そのため多職種との連携が必要になるのです。医療者以外の多職種が関わるため、それぞれの視点から体調や生活状態を伝えあい健康管理をする必要がありまず。例えば排便コントロールが必要な高齢者に対し、デイサービスの看護師と協力して服薬調整や排便処置を行いました。

多職種との連携には以下のような工夫を行っていました。

  • 連絡ノートによる情報共有と服薬確認などの依頼や確認
  • 注意事項などの資料作成と掲示
  • 重要な内容については電話やFAXを用いた連絡

このように、在宅では身体面の管理だけでなく、病気や障害を持つ利用者さんとご家族の生活がスムーズに送れるように、リーダーシップを発揮してその人のケアを構築していけるところが訪問看護の面白い部分ともいえます。

1人でも大丈夫?オンコール対応とは

「オンコール」は在宅における「ナースコール」というとイメージが付きやすいかも知れません。事業所が用意した携帯で緊急電話を受けます。相談内容は、体調に関する相談から不安の訴えなど多岐にわたります。オンコール対応を行うスタッフは、当番制や担当看護師制、管理者対応などステーションによって異なるようです。担当するスタッフが不安なく対応するためには、日頃からの情報共有や対応が予測される対象者さんの判断基準などについて、予め確認するなどの準備をしておきます。

利用者さんの中には、深夜の電話に気を使われる方もあり「どの程度なら電話してもいいの?」と質問を受けることもあります。「気になったら早めに連絡してね。」「直ぐ出られないこともあるけど、折り返し連絡しますね」と声をかけ、日頃からコミュニケーションを大切にして、気兼ねなく連絡できるよう努めています。

私が経験した夜間のオンコールをご紹介します。
一例目は、高齢者夫婦の二人暮らしです。利用者さんは70代後半の妻で不全麻痺がある方でした。転倒後、意識はあるが起き上がれない状態でした。ご主人だけで対応ができず電話してこられました。緊急訪問すると、数か所に打撲が有り骨折も疑われたので、救急車にて病院搬送しました。
二例目は家政婦さんが泊まり込みで介護しているケースでした。看取りの時期になり、無呼吸出現したことで、不安が強くなっていました。「息が止まったと思う」「確認してほしい」と数時間おきに連絡が続きました。「苦しくないですからね。落ち着いて朝まで待ってね」と対応することでおちつかれ、朝を迎えることができました。
事前に出来ないこともあると利用者に伝えていたので、夜間の電話全てに対し訪問しなければということはなく、状況判断に応じて対応していました。全ての緊急コールが時間外の訪問になることはありません。

地域医療で欠かせない、多職種連携の実際

オンコールや勤務体制などがしっかりしているところ…と安心して働いていると今度は慣れない報告書作成業務が毎月やってきます。訪問看護では急変しない限り毎日医師への報告は必要ありません。その代わりに関係者への定期的な報告が必要になります。まず連携するのは指示をいただく医師、つまり利用者の主治医です。1人につき1人。当たり前ですが利用者によって主治医は違います。診療所ごとに連絡可能な時間帯も異なります。また介護保険ではケアマネージャー、障害福祉分野では相談支援専門員など生活全体のプランを立てる職種を中心に薬剤師・介護士・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士・福祉用具業者などとも連絡を取り合う機会が多いです。

利用者は全て日常生活でも医療介入が必要な方ですが、医療が使い放題な訳ではありません。訪問看護は介護度や医療必要度によって給付が異なる為、1回1時間を週に2日のみと決まっていたり、訪問介護の方が単価が低いので看護師は週1回・それ以外は訪問介護でというケースもあります。
人工呼吸器の管理が必要な方だと複数の訪問看護ステーションが分担して入っているケースもあります。そうなると利用者に関する確認事項は、簡単で皆がわかりやすいものにすることが連携のポイントになります。専門用語よりも「誰でもわかる」こと。例えば脊髄損傷のポジショニングは利用者の日常を守るためには専門職以外もできないと困るのです。写真にしたり、使うクッションを決めておいたり、理学療法士と協働して姿勢のパターンを作り、伝えていくことなども連携の一部です。

厚労省 社会保障審議会介護給付費分科会(第230回)資料2より抜粋

連携で大切なのは「顔の見える関係」と言われますが、実際には時間が重なることは少なく「顔はなかなか見せにくい関係」なのです。それでも会議や話せる機会に方向性を一致させ、限られたメンバーと時間の中でより良い利用者の生活を考えます。連絡調整の作業は大変ですが、効果も見えやすくやりがいも大きいと感じています。

また看護計画に基づいた報告書も定期的に作成します。病院だと入院から退院の流れで終了ですが、利用者の生活は変化していくためどんどん看護計画が変化していきます。PDCAを常に回しているイメージです。この報告書は医師やケアマネージャーに共有するので、私たちの日々の活動を1ヶ月の報告として共有しています。実際の報告書作成作業は普段の訪問スケジュールがあるので、月末月初に気合を入れて行うイメージでした。

 

訪問看護に向いている人とは

実際にいくつかの訪問看護ステーションで働いた私自身も含め、いろんな看護師スタッフの話を聞くと、意外に「自信はなかったけど訪問看護に転向してみた」という人は多いです。看護師の大半は一般的な看護技術はできると思っているけれど、どんな領域でも大丈夫という看護師はほとんどいません。手術室出身のスタッフは「血液の数値は読めるけど話ができる患者さんに対応するのは緊張する」と言っていました。整形外科出身のスタッフは「片麻痺患者さんの入浴介助は難なくこなせるけど、内科疾患には自信がない」と話してくれました。色々な背景を持つメンバーがいるからこそ、カンファレンスも違う視点で話し合えるという強みがあり、気付きや学びのある環境になっていくのだと感じていました。

私は、訪問看護に向いているのは「新しいことを学ぶのが苦ではない人」ではないかと思います。利用者さんの常識は、看護師としての当たり前とは違います。医療的な優先度と利用者さんのQOLとの兼ね合いを探り寄り添うことができる、新しい発見や知らないことを楽しいと思える人であれば、きっと大丈夫だと思います。そして何より「自分には何が出来て、何が出来ないか」を知り、受け入れることができていればベストです。1人で結論が出せなくても、相談し合える学び合える環境のステーションであれば案外何とかなるものです。1人で頑張る人より、これは自信がないので見ててほしいです、一緒に助けてほしいですと言える人であれば自然と利用者さんを中心としたケアの輪が広がっていくと思います。

まとめ:訪問看護ってどんなお仕事?

訪問看護の業務内容や一日の流れ、オンコールの実際などを体験談に基づきご紹介しました。自信はなくても、目の前の利用者さんから学ぶこと、多職種・他領域から学ぶことで病院とはまた違う気付きがあります。
私は、訪問看護の世界は、是非多くの看護師の皆さんに飛び込んでみて欲しいと思っています。自分らしく働ける職場に出会えますように。

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この記事を書いた人

人を繋ぐ仕事を求めて教育や営業も経験した40代看護師。3児の母。重症心身障害児を育てながらの日常や転職の経験は人一倍。取得資格は看護師・保健師・養護教諭2種・公認心理師・整理収納アドバイザー1級など。

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