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自己イメージがメンタルヘルスに影響する?心を健やかにするエッセンス

「患者さんの役に立っていない」「評価されず、自分はダメな人間だ」「自分の外見が嫌」なんて、思ったことはないですか?
ネガティブな自己イメージが湧き、自分が無価値に思え、心が苦しくなりますよね。
自己イメージとは、「自分で自分のことをどう思うか」ということです。ネガティブな自己イメージの形成には認知の偏りが関与し、心身や対人関係、問題解決行動に影響します。そして、メンタルヘルスの不調をきたす場合もあります。
筆者は、精神科認定看護師・キャリアコンサルタント・公認心理師・産業カウンセラーの資格を取得し、メンタルヘルスに関連する専門分野で看護をしています。
勤務先の精神科病院では、メンタルヘルスの不調による休職者を対象とした復職支援のリハビリプログラムを行っています。これまでの10年で100名以上を担当してきました。こうした経験を踏まえ、自己イメージという観点から心を健やかにするエッセンスをお伝えします

目次

認知の偏りを自己点検

認知の偏りとは、出来事に対して事実を歪め偏った解釈をするということです。出来事の原因を少ない情報で解釈したり、確認をしないまま相手の思考を推測したりすることで生じます。
同じ出来事に遭遇しても、人それぞれ解釈や受け止め方が異なります。上司から「書類は出来た?」という場面があったとします。Aさんは「期日が迫っているので教えてくれた。有難い」とポジティブに受け止め、行動に移します。Bさんは「仕事が出来ない人と思われている。だから、確認をされたのだ」とネガティブな自己イメージをして苛立ちます。さらに「無能と思われているのではないか」と相手を疑い、悲しい気持ちになります。
極端に偏った非合理的な解釈をすることにより、不快な感情が生じ、気分が落ち込みます。ネガティブな自己イメージをして、自己肯定感は低下するのです。問題解決に至らないような不適応な行動をしたり、対人コミュニケーションでの障害がでたりします。
まず、ネガティブな自己イメージが続いていることに気づきましょう。偏った認知となっていないか、別の捉え方はないか、視点を変えて考えます。視野を広げ、自分・他者・環境・状況と複数の情報から出来事を解釈しましょう。他者から意見を聞くこともよいです。

現実と頭の中の世界を区別する

頭の中の世界(思考)は、実際に起きた出来事(事実)を解釈します。「先輩に挨拶をしたが、返事がなかった」という出来事があったとします。それに対して「先輩に挨拶をしたけど、ミスをしたから、返事をしてもらえなかった」と受け止めれば、事実と解釈を混同していることになります。「ミスをしたから返事がなかった」というのは、解釈です。実際は先輩が挨拶に気付かなかった可能性があります。事実は「先輩に挨拶をしたが、返事がなかった」というだけの出来事です。認知の偏りにより解釈が歪み、さらに「事実=解釈」と捉えることで、事実ではないことに対して悩み不快な感情が生じます。
実際に起きた出来事(事実)と頭の中で解釈したこと(思考)を区別します。「事実≠解釈」と認識し、解釈を歪めていないか検討しましょう

「過去と他人は変えられない」を受け入れる

認知の偏りは、過去の経験が影響します。例えば、いじめられた経験があれば、現在の人間関係が良くても「自分は人から嫌われる」と思い込み、人と一緒にいてもいつも不安な気持ちになります。現在の自分は過去と異なる状況ですが、現在も過去に囚われているのです。結果、ネガティブな自己イメージに支配され、今を不自由に生きることとなります。過去に囚われた自己イメージは、心を苦しくさせるのです。自己イメージをポジティブにするために「○○と思ってほしい」「○○と言ってほしい」「○○と行動してほしい」と相手に期待をすることも心を苦しくさせます。自分が満足する自己イメージの要素が「外見」「他者からの評価」「社会的地位」「社会的地位や身分に属する存在」「物質」というような外的である場合も同様です。外的要素は、自分でコントロールするには限界があります。相手は自分の期待通りに思考・発言・行動をするとは限りません。コントロールができない要素に対してエネルギーを注ぐことは、労力だけが奪われ心身が疲弊します。いつまでたっても満足せず承認欲求が満たされません。ネガティブな自己イメージが維持されるのです。
精神科医エリック・バーンは「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」と述べています。過去には戻れません。過去の出来事を教訓として活かし、改善し行動することで、現在を生きることができます。ただし、過去のトラウマは心身に症状が出ている場合は、治療が優先となります。
「他人を変える」ということについては、相手には「自由に考える権利」「自由に発言する権利」「自由に行動する権利」があります。だからといって、「相手に何もしない」というわけではありません。ポジティブな自己イメージをもつために「相手を変える」ということを手放すと、コントロールできないことへのストレスは減ります。相手に働きかけた結果は、相手次第であり自分の期待通りにコントロールできないと認識をしておくことです。

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自己評価は他者評価とバランスよく

過剰に低い自己評価は、メンタルヘルスの不調をきたす要因の1つとなります。例えば、「自分は何をやってもダメな人間」と自己評価をしている場合、仕事で実績を出していても自己イメージは「自分は無能な人間」「周囲の人は自分がダメな人と思っている」と思い込んだりします。現実の世界は実績があり他者から認められていますが、自分の頭の中の世界では自己や他者に対してネガティブに捉えます。このように認知の偏りは、現実と頭の中の世界にズレを生じさせます。頭の中の世界がネガティブに偏ることで辛い感情やマイナス思考をもたらし、気分が落ち込みます。十分に頑張っているのにも関わらず、努力が足りないと思い、限界にくるまで仕事をします。結果、心身が疲弊しメンタルヘルスの不調をもたらすのです。
反対に、自己評価が高い場合もあります。自己評価が高いのでネガティブにならず、支障はないように思いませんか? そうではないのです。他者と自己の評価が一致していない場合、支障が生じます。例えば、上司は「マネジメントの適性がないため昇格の対象ではない」と評価していますが、自分は「実績があるので昇格する」と思い込んでいる場合です。他者と自己の評価にズレが生じています。さらに、自分が満足する自己イメージの要素として「昇格」がある場合、同僚が次々と昇格する状況となればどうなるでしょうか?「自分は実績を出しているのに、なぜ、あの人が昇格するのか」と思うようになります。そして、周囲や職場に対して「あの人がいるせいで自分が昇格できない」と周りのせいにし、陰性感情を抱くようになるのです。行動に影響し、対人関係で軋轢が生じ、仕事へのモチベ―ションが低下します。職場で孤立し、自信を失い、心身にも不調をきたしかねない状態となります。
自分が満足する自己イメージの要素として昇格のみではなく、他の要素もあるならば自分を肯定的に捉え、心身の不調をきたすまでには至らないでしょう。例えば、「患者から感謝されているので、職業人として自分は成功している」と思うことで自分を肯定的に認めることができます。心を穏やかに保つことができ、対人関係に軋轢が生じるリスクも減ります。自己評価が高くても現実の世界(事実)や他者と自己のズレがある場合は支障が生じるのです。
他者評価と自己評価と大きく違っていないか、偏った自己評価をしていないか確認をします。自己評価が低い場合は、他者から受けたポジティブな評価や自分の強みを書き出しましょう

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自己理解し、ありのままの自分を受け入れる

自分の欠点や弱みを認めたくない人がいますが、そもそも完璧な人は存在しないです。自分の能力を客観的に理解し、弱みと強みを受け入れることが必要です。弱みを改善することも良いですが、限界もあります。限界を見極め、弱みをネガティブな自己イメージとするのではなく、個性として受け入れることです。能力を客観的に判断し、人に助けてもらうことは生きるために必要な行動です。人と人が支え合うため、それぞれの強みを活かせばよいのです。助けた人も役に立てたという喜びが得られるかもしれません。

失敗した時こそ行動を

完璧さを追求することで少しのミスや失敗を認められず、自分が許せなくなります。ミスによる問題は生じていないのですが、自分を過剰に責め、劣等感に陥ります。自分への不満が強くなりネガティブな自己イメージが膨らんでいくのです。すると失敗を恐れ、行動することを回避するようになります。問題が解決せず事態が悪くなります。悪循環により心身共に疲弊し、メンタルヘルスの不調にもつながります。
失敗したとしても心身の状態や能力に応じた範囲で努力し、リカバリーするために行動すれば良いのです。人に迷惑をかけ、助けてもらうことはありますが、目的を達成することが大事です。人という資源を活用し、目的達成のために行動しましょう。

自分を満足させる要素を増やす

「人や社会から認められる」「何かを成し遂げる」「外見などありたい自分でいられる」など自分が満足する状態になれば、自己イメージはポジティブとなります。反対に「失敗した」「人から批判された」「今日来ている服はダサい」など不満がある状態になれば、自己イメージはネガティブとなります。自己イメージは、少しのことで外的・内的な要素によってポジティブになったりネガティブになったり揺らぎます。自分を満足させる要素が少ない場合、不満足な状態に陥りやすくネガティブな自己イメージをします。「自分はダメな人だ」と自己否定的な認知の偏りがある場合は、良い出来事があったとしてもネガティブな自己イメージが維持されます。
自分を満足させる外的要素や自分を磨くことで得られる「優しさ」など自分でコントロールができる内的要素を増やしましょう。自分に対して否定的な認知の偏りはないか振り返り、自分の長所や強みを書き出しましょう。

まとめ

現代はストレスフルな社会であり、誰もがメンタルヘルスの不調をきたすリスクがあります。活き活きと人生が歩めるよう心の健康を守りましょう。

【参考文献】クリストフ・アンドレ著,高野優訳,「自己評価メソッド―自分とうまくつきあうための心理学」,紀伊國屋書店,2008年07月,8~82ページ

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この記事を書いた人

精神科認定看護師・キャリアコンサルタント・公認心理師・産業カウンセラー・リフレクソロジーの資格を取得。メンタルヘルスの不調により休職した方への復職を支援しています。

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