働き方の変え方

接遇は看護だけではなく人間力を上げる大切なスキルの1つ

看護師と患者の信頼をイメージした画像

接遇といえば接客業のイメージがあるかもしれませんが、医療業界においても接遇マナーは院内教育や外部から講師を招き研修をしているところが近年増加しています。
理由として患者さんが病院を選ぶ時代になっていることだけではなく、リスク対策・医療安全の側面からも接遇スキルの重要性が増してきているからです。

看護師はマナーへ関心を向ける機会が少ないかもしれません。
治療や看護ケアの提供だけでも忙しいですし、マナーといっても患者さんと一般的な接客業でいうお客様は違うと考えてる方も中にはいらっしゃると思います。
私は看護師になる前に接客業(ホテル、空港に医療事務)を経験してきました。
そんな私が看護業界に入ったときに気になった接遇について紹介していきます

接遇とは

接遇とは、心地よい時間や空間を提供することであり、相手の立場に立って目線を合わせ、一歩踏み込んで寄り添っていくことです。

少しでも、患者さんやその家族が気を遣わず、リラックスして過ごせるような配慮が求められています。
一般的なマナーとされるお辞儀の仕方や笑顔の作り方は重要ではなく、医療接遇では緊張感や威圧感を与えないような心配りの方が重要とされています。

また、接遇が身についていることで、患者さんやその家族との信頼関係がつくりやすくなり、治療や看護ケアを円滑に進めることができるなどのメリットももたらしてくれます。接遇については医療職としてだけではなく、プライベートにおいてもプラスになる要素がたくさんあるので、ぜひ身に付けてもらいたいスキルの一つです。

なぜ看護師に接遇が必要なの?

信頼関係がなければ看護ケアを提供できない

「信頼関係」という言葉は看護学生時代からよく聞いてきた馴染みのある言葉だと思いますが、もう一度その意味を振り返ってみましょう。

「信頼」とは頼りになると信じることをさします。
病院でいうと、患者さんは気になる症状や病気に対して、この病院やこの先生なら治してくれるのでは?といった期待を持っています。その期待が、医療従事者に対するポジティブな姿勢や態度として表れており、その状態が信頼なのです。

患者さんの治療を円滑に進めていくには、患者さんや家族の協力が必要です。
その協力を求めるためにも信頼関係の構築が重要となってきます。

初めて診察をして検査に行くときの患者さんの行動をもとに考えてみましょう。
患者さんが病状を伝えると、その病状から予測できる疾患について確定診断のためさらに検査を追加するケースがあります。
検査の目的を説明して同意が得られれば、検査という流れになります。
この一連の流れの中では、患者さんと医療者の間には、「病状からの回復」という共通の目標があります。患者さんは自分の身体を医療者へ委ねる、話を聞き入れるという形で「信頼」を表しており、ここに医療者への信頼関係がなければ、説明をしても納得できない、検査に協力しない、などという状況になってしまいます。

このように、良い方向に治療が進むという期待がお互い一致する事により、治療を円滑に進めることができるようになるため、信頼関係の構築が必要なのです。

病気に苦しむ人は敏感になっている。病気に苦しむ人は、不安や心配を常に抱えています。それは病気に関すること以外にも、治療費や家族のこと、生活スタイルの変化などにも不安を抱えているのです。
そのため、ささいなことでも敏感になっている状況であり、何気ない対応で傷つけてしまうことも出てきます。

実際に私は数年前、原因不明の脱力感と痺れによって、立ち上がる事や歩くことさえ一人では難しい状態になりました。
約半年間入院し、約1年間リハビリを受けるなど、患者としての経験をしたのですが、その間、看護師に対して信頼をなくした経験をしました。
手術後に普段より気落ちした日があり、看護師に手伝いをお願いしたところ「普段できていることなのに甘えはよくないですよ。」と言われたのです。
それからは困ったことは看護師ではなく、回診時に来る医師に伝えるようになりました。

少し勇気を出してお願いしているところに、理由も聞かずに甘えはよくないと言われたらどう思うでしょうか。
私はこの時、看護師として再起できるかどうか強く不安を感じていたので、そのような思いをわかってもらえないことが辛いことでもありました。
患者さんは将来の見通しがイメージできていないこともあり、ささいな事にも不安を感じます。
病気だけではなく、患者さんの心に寄り添った対応が求められているのです。

スタッフの行動が病院の信頼につながる

組織で働く看護師は、自分が組織の一員であることを考えて行動する必要があります。

勤めている病院が信頼を失い、患者さんが減ってしまうと、収益は落ちてしまいます。
そうなるとボーナスが減るかもしれません。最悪の場合は病院がなくなり、職を失う可能性もあります。
一人一人の行動が、組織の信頼につながっているので、マナーの悪いスタッフがいると、組織全体が同じように見られる可能性があります。

例えば、「○○病院で××な事が起こりました。現在病院側は事実確認を調査中です」とニュースが放送されることがあります。もしそのように放送されるとSNSや口コミサイトで、かんたんに悪評が書かれ叩かれてしまいます。その案件に関わっている人が少数であっても、“○○病院“として全体の評価をされてしまうのです。

そのため、いろんな人に見られているという認識をもち、勤務先のブランドイメージを壊さないように気を付けることが必要です。

患者とのトラブル予防

患者さんからのクレームや医療訴訟は医療提供側に過失がなくても起こるといわれています。
医療者は専門知識を持ってコミュニケーションをとっていますが、患者さんが間違った受け取り方をしてしまう可能性があります。
些細なことですが、実はそれがクレームや医療訴訟の原因となりうるのです。

忙しいと、つい視線だけ移して話すこともあるでしょう。
しかし、そんな時こそ患者さんやその家族とのコミュニケーションでは、面と向かい、共通理解が得られているかどうか、確認をしながら進めていくことが必要です。
少しの配慮で患者満足度は向上し、クレーム等トラブルの軽減にもつながります。

看護師の接遇は?気になった3つのポイント

看護師と患者の信頼をイメージした画像

コミュニケーションスキルに+αを

看護師はコミュニケーション能力が高い人が多く、疾患の事についてとても話が膨らみ

ます。
しかし、その他の話題になると物足りなく、話題の引き出しを持ち合わせていなかったり、業務内容や時間を考慮して話を切ろうとしたりと、自分たちの必要な情報以外は聞かないという場面が見られます。
接遇を意識するのであれば、患者さんの興味のある話題を持ち出すなどをして、もう少し歩み寄る姿勢を見せるとよいでしょう。

職業人としての言葉遣い

患者さんの年齢や立場を気にせずに、敬語をつかわず話し言葉で会話をされる方もいらっしゃいます。
患者さんの中には、看護師が孫くらいの年齢で、笑って対応してくれる方がいるかもしれません。
しかし、患者さんは家族や友人ではなく、仕事として接する相手です。
職業人としてのプロ意識を忘れないよう、相手に合わせた話し方を意識しましょう。

身だしなみは相手に与える印象を左右する

人を見るときにはハロー効果と言って、その人の目立つ特徴につられて評価が大きく左右されるという研究結果がでており、最初の3秒でその第一印象が決まってしまいます。
そんな中、医療業界は身だしなみに対し、制約が少なく、頭髪の明るさや、髪を結ぶゴム、化粧など意識していない看護師も見かけます。

しかし、身だしなみがおろそかになっていると、だらしないイメージを与えてしまい、その後のイメージが悪くなったり、信頼関係の構築に時間がかかったりしてしまうのです。
清潔で好感が持てる身だしなみは、ポジティブなハロー効果につながるので、身だしなみを整えておくことは職業人として最低限のマナーともいえます。

接遇を身につけるメリット

接遇を身につける事は仕事だけではなく、人間力があがるというよい効果もあります。
例えば、人を喜ばせたり笑顔にしたりするためには、その相手のことを想います。
相手の笑顔を想像しながら計画を立てることってワクワクしませんか?

同僚などお互いに、接遇の意識を磨いていけば、結果として思いやりの精神を持った係が出来上がり、良い職場環境につながります。
そして病院全体の接遇力の底上げにもながっていきます。

信頼関係の構築で看護ケアが提供しやすくなる

接遇がしっかりしていれば、患者さん、ご家族から信頼してもらいやすくなります。
復習ですが、「接遇」は、一人一人のお客様の目線に姿勢を合わせて、相手の心理に寄り添った表情や態度で挨拶をすることです。
接遇の良さが第一ステップでそこから患者さんやご家族へのきめ細かな心のこもった対応を通して信頼関係の構築へ進みます。

患者さんとの信頼関係ができていることは、看護を提供する上でかかせないことです。
信頼されることで、看護ケアを受け入れてもらいやすくなりますし、気になる症状などを教えてもらい新たな病気の早期発見につながるなんてこともあります。 

給料が増える可能性もある?

組織の信頼があがることにより、患者さんから選ばれ、患者数が増加すれば病院の収益が上がります。
そうなると給料としてスタッフに還元される可能性があります。

医療接遇コンサルティングを導入したことにより、患者来院数が前年度比200%、手術3か月待ちというような状況になった事例や、医療接遇研修を受けたことで患者数が1.6倍になるといった事例もあります。
スタッフ一人一人の意識変化がなければこのような結果にはつながりません。
患者数のアップは収益アップにつながるため、自分の接遇が経営に影響を与えているという意識を持つことが大切です。

ヒヤリハットやインシデントの減少

どこの病院で働いていても、必ず起こりうるヒヤリハットやインシデント。
これらはコミュニケーション不足が原因になることが多いです。
伝達していても「聞いていなかった」「忙しいから」という話はよく聞きませんか?

患者さんだけではなく、職員同士の適切なコミュニケーションは、チーム力の向上につながります。
組織力が向上することでリスク管理もしやすくなり、ヒヤリハットやインシデントが減るという好循環が生まれてくるのです。

明日からできる!接遇ワザ5選

挨拶

挨拶は人間関係の第一歩、とは日常生活であっても、接遇の場面でも変わりがありません。
明るく、柔らかい声でのあいさつは、相手の気持ちをほぐして距離を縮めることのできる魔法のような言葉です。
あいさつで心がけるべきポイントは以下のようにおさえておきます。

「あ」
あかるく(明るくさわやかな挨拶をする)

「い」
いつも(どんな状況でも挨拶は欠かさない)

「さ」
先に(他人からではなく自発的に挨拶をする)

「つ」
続ける(いい挨拶も続かなければ意味がありません)

身だしなみ

清潔感のある、きちんと整った身だしなみ(例えばTPOを理解した服装)は患者さんやご家族に安心感と信頼感を与えます。
第一印象を決める重要なポイントです。

身だしなみはおしゃれではありません。おしゃれは自己満足のためにするものですが身だしなみとは自分の好みに左右されず、その場面にふさわしい装いをすることです。

表情

目は口ほどにものをいうといいます。目元の表情を含め、親しみのある自然な笑顔は患者さんやご家族の気持ちをほぐし、親近感と安心感を与えるものです。

①視線を合わせる

②口角をあげる(3分咲きの笑顔)

③目にも表情をつける

この3つが自然にできるようになるには練習が必要です。
筆者も接客業に従事していた頃は先輩に注意されました。
そのため、手鏡を使って家でこっそり練習していた時期もありました。

言葉遣い

正しい敬語(尊敬語や謙譲語)が使える事が前提であり、そのうえで患者さんやご家族の年齢や性別、地位にふさわしい言葉遣いを意識しましょう。

態度

ここでいう態度とは「立ち居振る舞い」です。
患者さんやご家族に圧迫感や不快感を与えない、適度な距離で、品よく振る舞うことが感じよさに繋がります。
忙しくても、患者さんに忙しさを感じさせないような態度が重要です。常に患者さんやご家族に顔も体も正面を向いて接するようにしましょう。
さらに、医療職の場合は時間を守るという要素も含まれます。

まとめ

接遇は決して難しい事ではなく、まずは挨拶を自分から率先して行う事や、服装と髪型を自分より目上の人が好むような身だしなみに変えてみる事などからはじめてみましょう。

接遇マナーは医療職として信頼関係をつくるうえでの影響だけではなく、私生活においてもプラスになる要素がたくさんあります。
第一印象のイメージアップや立ち居振る舞い、言葉遣いに良い変化をもたらし、結果的によい人間関係をつくることができます。

是非これを機会に人間力アップしてみませんか?

(監修: 株式会社クラウドクリニック看護部長 健康経営セミナー講師 三浦あかね)

ABOUT ME
Tomoko
富山県出身。1984年生まれ。日本で他職種(接客業)から看護師へ転職。高校卒業後は外国語専門学校へ通学していたため、看護師になる前から海外を視野に入れていた。臨床3年で渡豪し、ワーキングホリデーを経て現在はオーストラリアの大学単位履修修了。オーストラリア正看護師登録に必要な英語テスト勉強中。アシスタントナースとして病院や施設に在宅看護を経験し働きながら大学生活を送っている。 2021年で科目履修を終了し、2022年4月に卒業式予定。国際看護師を目指している。