透析療法のパイオニア的な存在である千葉県の東葛クリニック病院では、医師、看護師、薬剤師、理学療法士らで結成されている4つの医療チームが存在します。チーム医療が推進される中、20年近く前より先駆的に看護師が医師らとワンチームで医療を提供しています。
今回、フットケアチーム、排便サポートチーム、認知症ケアチーム、慢性腎臓病チームの4つの医療チームで活躍する看護師にチーム医療の成果とそのやりがいについて聞いてみました。
1.東葛フットケアチーム
透析患者さんは糖尿病を併発していることが多く、血流障害・神経障害により足に傷ができても気がつきにくく、傷は治りにくくて悪化しやすい特徴があります。ここではフットケアチームの活動内容について紹介します。
①チームの始まりと現在の活動
当院では以前、大腿や膝下からの大切断になってしまい自宅での生活が難しくなるケースがありました。そこで2005年フットケアチームを立ち上げ活動を始めましたが、潰瘍ができる患者さんは減らず、大切断を余儀なくされる例があとを絶ちませんでした。
その後、フットケアチームのメンバーがアメリカで専門的な知識を身につけ、2006年創傷ケアセンター(外来)を立ち上げ、徐々に大切断は減少していきました。フットケア外来が2009年に始まり、潰瘍の治癒後もケアを継続、潰瘍にしない予防的なかかわりも功を奏し「東葛の足を守る」サイクルが出来上がったのです。
②フットケアチームによるスタッフへの教育
足趾や下肢の切断は患者さんのADLやQOLの低下、家族や介助者の生活にも大きな影響を及ぼします。いつまでも自分の足で元気に透析に通って欲しいという思いから、フットケアチームでは、スタッフに対して予防的フットケアや足のアセスメントに関する勉強会を定期的(2月10日フットの日、8/10)に行っています。コロナ前は集合形式で勉強会を行っていましたが、現在は院内メールでの動画配信を行い、勤務時間内に繰り返し視聴できると好評です。
③透析サテライトラウンドと患者さんの笑顔
透析サテライトに通っている患者さんは受診できない方も多いため、フットケアナースがサテライトに出向き、透析中の患者さんのフットケアを行っています。サテライトのスタッフに説明しながらケアを実施するため、スタッフ教育もかねてその後のフットケアの継続が可能です。普段はサテライトのスタッフが患者さんの足チェックをし、異常があれば本院と連携しフットケア外来や創傷ケア外来の受診につなげています。また、当院の訪問看護を利用している方のフットケアの依頼時に同行し、地域住民へのフットケアも行っています。
皆さまの足を美しく仕上げるのはもちろんですが、女性は特に美しく仕上げて欲しいという希望があります。肥厚爪の方は、足を見られたくないからプールにも行けなかったのが「足を見せられるようになった」「足が軽くなった。きれいになった」という言葉をいただき、患者さんの笑顔がやりがいにつながっています。
各サテライトに東葛フットケアナースを配置することが目標です。
2.排便サポートチーム
医師、皮膚・排泄ケア認定看護師、病棟看護師、検査技師、薬剤師、栄養士の多職種で構成されている排便サポートチームについて紹介します。
①排泄エコーを活用した日本初の試み
褥瘡対策チームとして活動していましたが、対象者が少ないため、排泄による皮膚トラブルの患者さんに対しても介入していました。療養病棟は全員透析患者さんのため、食事・水分制限による便秘が多いです。そこで排便サポートチームではエコー活用しています。エコーは非侵襲的検査で、看護師も直接、腸内の便の位置を把握し個別的な排便プランを立案しケアしています。エコーによる便の確認を行ったのは日本の病院として初の試みでした。通常であれば、便がどの位置にあるのか分からないまま、下剤を使用したり、摘便をしたり排便コントロールを試みます。しかし東葛クリニック病院では肛門部より小さなエコーを当て確認。便が実際に肛門付近におりてなければ、無駄な下剤を使う必要はなくなります。排便サポートチームでは毎週木曜日に廻診を行っています。
②チームにおける看護師の役割
排便サポートチームは病棟看護師と協力し、対象患者さんを選別、毎週の廻診時に1週間の生活状況や排便パターンを情報共有しています。排便に対する本人の気持ちや意向を聞くと、食事や水分制限があっても、毎日排便があった方がいいと希望される方もいます。患者さんの気持ちを汲んで、その人らしい排便プランの実施とプラン継続のために病棟スタッフへの教育的かかわりも大切です。
排便がいつ出るかわからず外出への不安がある方が、エコーで排便の画像を一緒に見ることで、今すぐ排便はないだろうと確認でき安心感を得られた方もいます。患者さんが安心される姿にやりがいを感じます。療養が長期になる患者さんが苦痛なく、その人らしい排便サポートを目指して今後も活動していきます。
3.認知症ケアチーム
神経内科の医師(外部)、認知症ケアチームの病棟看護師、外来、透析室のスタッフ薬剤師、理学療法士という多職種で構成されている認知症ケアチームについて紹介します。
①チームの役割や活動内容
毎週水曜日、認知症ケアチームでは1時間カンファレンスを行っています。認知症と診断されている患者さんの情報共有を行います。患者さんの日中と夜間の様子や言動などを記録から収集し、関わり方を医師からアドバイスいただいたりディスカッションをしたりしています。カンファレンスの後は、実際に患者さんのもとへラウンドに行きます。
②看護師の役割と活動する中でのやりがい
身近で患者さんをみているのは、やはり看護師です。病棟、透析室の看護スタッフへ認知症の方の重要な情報を記録に残せるよう働きかけ、教育的な関わりが大切な役割です。認知症患者さんと接する中で、笑顔が見られたり苦痛なく安心して入院生活が送れていると感じたときにやりがいを感じます。全スタッフ、病棟全体で認知症患者さんの気持ちにに寄り添える関わりができることが目標です。
今年度の研修は、認知症評価として「長谷川式認知症スケールとは」を企画しました。透析患者さんの高齢化に伴い認知症の患者さんが増加しています。サテライトを含め動画を使い研修ができました。
4.CKD(慢性腎臓病)チーム
外来看護師、管理栄養士、薬剤師で構成されているCKDチームについて紹介します。
①慢性期疾患に対する指導
慢性腎臓病を患う外来患者さんの情報収集、生活支援を行っています。外来でも患者さんの計画立案を行い、生活支援、患者さんの希望に沿った支援を行っています。支援している方には、慢性腎臓病初期の段階から透析に移行間近の患者さんと多岐にわたります。早めに必要な支援を行っており、患者さんが自宅での血圧測定、体重測定ができるよう指導を行うなど本人ができることから関わっています。特に食事に対する悩みが多く、コンビニの食品選び、1人暮らしの方への栄養指導などです。計画は電子カルテ上で共有し、月に1回ミーティングを行っており、医師へ情報提供しています。
②人生に寄り添う看護
チームにおける看護師の役割としては、患者さんのこれからの人生がよりよいものになるよう患者さんの目標に向かい、チームとして必要な支援の調整を行う上で、看護師はチームのキーパーソン的な役割を担っています。
外来での短い時間で信頼関係を深めることは苦労を要します。その中で情報を引き出し、必要な支援や自己管理方法、透析後の生活などを伝えることで「よくわかりました」とのお言葉をいただけることが何よりです。
しかし、中には病気の受け入れが難しく、コミュニケーションが取りにくい患者さんもいます。そのようなケースは様子を見ながら歩み寄る姿勢でいます。「透析中心の生活になってしまう」と思ってしまいかねない患者さんに寄り添い「生きていくための透析。今の生活に透析を取り入れる」ことを一緒に考え、患者さんによい人生を送っていただくための支援をしていきたいと思います。
まとめ:透析医療に興味がある、エキスパートを目指したい看護師さんにおすすめの病院
チーム医療で活躍する看護師の皆さんが、やりがいを感じて生き生きと働いている印象を受けました。透析医療専門の東葛クリニック病院では、外来患者さんや入院患者さんのほとんどが慢性腎臓病を患っています。医師だけでなく多職種と一緒に患者に寄り添う医療を行う看護師に今後も期待されています。
透析医療に興味がある、エキスパートを目指したい看護師さんにはおすすめの病院です。
東葛クリニック病院は、こんな人にオススメ!
東葛クリニック病院の規模は95床と大きくありません。そのためスタッフ同士のコミュニケーションが取りやすく、看護師の患者のためにより良いケアをやってみようという挑戦を応援してくれる病院です。
また、希望した研修・学会へは有休、旅費や研修費参加費を全て負担してくれます。まさに学びたい、知識や経験を活かして看護の可能性を広げていきたい看護師にピッタリです。専門医療チームで活躍も期待されています。
東葛クリニック病院について
東葛クリニック病院
千葉県松戸市樋野口865-2
Tel:047-364-5121
東葛クリニック病院
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