私は、看護師の経験が15年あり、その中の2年間介護老人保健施設で勤務していました。そのため知人の看護師から「介護老人保健施設で働きたいけど、どのような仕事内容なのか知りたい、私にも勤務できるかしら?」などと相談されることがあります。
介護老人保健施設は、入居者が限定され、在宅復帰を目指す施設なので、病棟で働く看護師とは違いがあります。そこで、実体験も含め介護老人保健施設で働く看護師の仕事内容から役割、病棟との相違点、向いている方について紹介していきます。
在宅復帰を目指す介護保険施設
介護老人保健施設とは、介護が必要な方に医療ケアやリハビリテーションを行う施設です。
入院治療の必要がなく退院された方が、在宅復帰を目指して入居します。医療スタッフが家族の方に〇〇の指導やサポートを行います。
入居者の対象は介護保険の要介護度が1~5の方で、要支援の方の入居は出来ません。
入居期間は、在宅復帰を目標としているため、原則3~6ヵ月です。在宅での準備が整わない場合などは、期限を超えても必ずしも退所とはなりません。
厚生労働省 介護老人保健施設 参考資料
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000174012.pdf
入居者の健康管理や医療行為
看護師の仕事内容は
- 健康管理と異常の早期発見
- 医療行為や処置
- 病院受診の付き添い
の3点です。それぞれ、詳しくお話していきます。
① 健康管理と異常の早期発見
看護師は、常に入居者の健康管理を行い、異常の早期発見に努めています。
入居者の状況を把握するために、バイタルサインや食事・水分量、排泄状況、言動や様子などをチェックすることが必須です。入居者のほとんどは65歳以上なので、成人に比較すると体内の水分量が低下します。そのため、毎食のお茶だけでなく、入浴後やおやつの時間など定期的に水分の提供があり、1日の水分量をチェックしています。また、膀胱留置カテーテル挿入中や利尿剤の投与をしている場合などは、IN・OUTチェックも欠かせません。
入居者の異常や異変があるときは、施設医へ報告し、指示を仰ぎます。入居者の変化を早期に察知するためは、看護師間だけでなく、他のスタッフからの情報も必要不可欠です。入居者の変化として、食事や水分量の低下、排泄状況(量や形状・色など)、言動や行動などは、他のスタッフからの情報で異変に気が付くこともあります。
② 医療行為や処置
老人保健施設では、主に次のような医療行為や処置を行います。
- 吸引
- 酸素投与
- 排便処置
- 心電図検査
- インスリン注射
- 点滴・採血・血糖測定
- 褥瘡や皮膚トラブルの処置
- 導尿、尿道カテーテル、人工肛門の管理
- 経管栄養(胃ろう・腸ろう・経鼻経管栄養など)
看護師は、上記のような医療行為や処置をしつつ、在宅復帰に向け入居者の状況に合わせ、本人や家族への指導やサポートもしています。
③ 病院受診の付き添い
入居者の体調不良時は施設医へ報告をし、指示のもと点滴の実施や内服の追加処方、採血などを実施。その後も状態の改善がみられない時は、病院へ受診することもあります。看護師は家族へ状態の説明をし、病院受診の付き添いをすることもあります。
中心的な役割をする看護師
老人保健施設の看護師の役割は
- 多職種との連携
- 入居者の家族への対応
です。それぞれ、お話していきます。
①多職種との連携
老人保健施設では、次のような職種のスタッフが勤務をしています。
- 医師
- 看護師
- 介護職員
- 生活相談員
- 介護支援専門員
- 施設管理職や事務職員
- 管理栄養士・栄養士・調理師
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士
看護師は、他職種との連携をする上で中心的な存在です。看護の視点から多職種へ、入居者の注意事項などを伝達することも必要となります。また、多職種との考え方や意見を尊重し、情報の共有をしながら、入居者へのケアを提供することが求められます。
②入居者の家族との対応
看護師は、入居者の家族との対応を中心的に行う役割があります。入居者の状態に変化があった場合は、家族へ連絡をして説明を行います。医師から家族へ説明がある場合、看護師は必ず同席。そして、医師から家族へ説明した内容を他のスタッフへ情報の伝達を行います。在宅復帰に向けて、家族からの相談や調整役も行っています。
介護老人保健施設と病棟の違いとは?
病棟とは異なる介護老人保険施設の特徴には、次のような点があります。
- 看取り実施の有無は、施設によって異なる
- 入居者は介護度が1~5の方のため、対象者が限定されている
- 誕生会や季節ごとの行事を取り入れ、企画や運営もすることもある
- 診療科の括りがないため、幅広い医療や看護の知識が求められる
- 限られた医薬品や医療物品、医療機器の中で入居者の対応をしなければいけない
介護老人保健施設は、在宅復帰に向けた生活を支援する場所であり、治療を目的としていないことが病院との相違点です。
そのため、点滴や褥瘡ケア用品、軟膏などが限定されているため、施設にあるものの中から使用しなければいけません。また、酸素投与が必要な場合は、酸素ボンベで対応するため、業者からの手配が必要となります。医療的なケアが必要な場合は、病院との差が生じるのが実態です。
こんな看護師こそ老健で働きましょう!
介護老人保健施設の特徴、看護師の仕事内容や役割などから、次のような看護師が向いていると考えられます 。
- 在宅復帰に向けての指導やサポートがしたい
- 高齢者との関りを好み、老年看護に興味がある
- 多職種の意見や考え方を尊重し、連携ができる
在宅復帰に向けて家族には、オムツや尿取りパットの当て方や入浴介助の方法、服薬での注意点などを個別に指導したことがあります。
入居の対象者は限定されているので、高齢者の特徴を活かした看護ケアについて実践することが可能です。
多職種との意見交換から、入居者に合ったケアを導き出すことができました。例を挙げると、介護士の排泄状況の観察から、入居者に適した吸収量の尿取りパットの選定ができることが多かったです。
介護老人保健施設に勤務しながら、上記のような内容を経験しながら学んでみましょう。
まとめ
介護老人保健施設で働く看護師の仕事内容や役割、病棟との相違点、向いている方についてお話してきました。
介護老人保健施設は、あくまでも生活の場であり、在宅での生活に向けてのサポートをする場所です。
高齢者の特徴を活かすことや多職種の意見を取り入れた在宅支援を学ぶことが出来ます。実際に介護老人保健施設に勤務をすると、入居者が在宅で生活できるようにするための個別指導について考えることが多かったです。
その他、毎月の誕生日会や季節の行事への参加は、入居者だけでなく施設のスタッフも楽しく、憩いのひと時でした。
介護老人保健施設は、在宅復帰に向けてのサポートをしたい方に、お勧めです。
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