MENU

病棟看護師にもぜひ経験してほしい、訪問診療の看護師とはどんな仕事?

私はコロナ渦の始まった2020年春から、訪問診療の看護師として働いています
訪問診療の看護師って訪問看護師となにが違うのかと思われる方もいるかもしれません。ここでは訪問診療の看護師の仕事を紹介します。
また在宅療養を支える多職種のサービスについてもお伝えしたいと思います。在宅医療や終末期医療に興味のある方はもちろん、いま病棟で働いている看護師の皆さんにもぜひ知っていただきたい内容です。

目次

もっと患者・家族の支援を 異動希望で訪問診療へ

画像

私は、20代は大学病院や一般病院の病棟、30代の子育て中から外来や内視鏡室で働いていました。役職にも就き、楽しく仕事をしていましたが、40代に入ると少しずつ体力の低下を感じるようになりました。40代半ばでこれからのキャリアを考え、「今までにやったことがない仕事をするなら少しでも早く挑戦したほうがいいかな?」と思い始めました。
勤め先は慢性期の在宅療養支援病院で、地域の高齢者医療を担っています。外来にいても、家族の介護負担、老々介護、独居など、高齢者の在宅療養は問題が山積していることを肌で感じていました。そうした方々をもっと支援したいと思うようになり、訪問診療に興味を持ち、希望がかなって異動しました

訪問看護師とは違うの?

画像

訪問看護師は、医師の指示のもとに病院や訪問看護ステーションから患者さんの自宅や施設へ看護師だけで訪問しケアを行います
対して訪問診療の看護師は、医師に同行し、診療の補助や採血や注射などの医療処置をします。患者さんや家族、施設スタッフへの療養指導もします。病院に戻ると、訪問薬剤師やケアマネージャー、訪問看護ステーションに連絡し、訪問スケジュールの調整もします。訪問診療は基本24時間365日対応、月1、2回の定期訪問の他に、患者さんや訪問看護師からの連絡で臨時往診もします。看護師が訪問する自動車の運転をする病院や、併設する訪問看護ステーションの訪問看護師を兼務するところもあります。また、診療の同行に看護師以外の介護士や事務員を配置している病院もあります。夜勤はありませんが、オンコール制で夜間や土日に当番をする病院もあります
私も夜間や休日のオンコール当番を月に3、4回しています。私の勤め先は、医師が患者さんからの連絡を受けて往診を決めると、オンコールの看護師に連絡がきて同行します。内容は「尿道留置カテーテルが詰まった」、「転倒して傷ができた」などさまざまです。コロナ渦の今は、発熱患者の抗原・PCR検査も行います。自宅や施設で亡くなった患者さんの看取りもあります。まったくコールがない日もあれば2、3回往診に出る日もあります。私は家でのんびりしていることが多いですが、電話をとれるようにしておけば、近所への買い物や散歩などもできます。

在宅療養を支える多職種との連携が重要

画像

在宅で療養する患者さんは、ケアプランを作成するケアマネージャーを中心に、さまざまな事業所による介護・医療サービスで支えられています。訪問看護・訪問薬剤師・訪問リハビリ・訪問介護・訪問入浴・デイサービスなど多岐にわたります。安全にケアを行うためにはそれぞれの事業所に必要な情報をお互いに共有することが不可欠です。
訪問診療からは処置方法やインスリンの注射量の変更、介護者が体調不良でサポートしてほしいなど、細かに伝えます。患者さんからの相談や訪問看護師の報告から得た情報を主治医に伝え、医療面に反映させます。診察時にはわからなかった患者さんの本当の思いをそこから知ることもあります。細々とした仕事で、大変だなと感じることもありますが、地域の事業所と協力し合うことで患者さんに良い結果をもたらしたときなど、とても喜びを感じます

このように看護師以外の職種の方と話す機会が多く、それぞれの仕事内容や考え方を知ることができ、とても勉強になります。ケアマネージャーや訪問看護師と話していて、患者さんに対する思いや悩みに共感することもあり、一人の患者さんの療養生活を支えるためにみんなで協働しているのだという感覚を持つことができます。

医療者にとってはアウェイだけど患者さんのホーム

画像

診療の補助という点で外来の看護師の仕事に近い部分もありますが、外来や病棟が医療者にとって「ホーム」なら、訪問診療は「アウェイ」となります。「アウェイ」と聞くと不利な、大変そうな感じがすると思います。医療者にとって病院は、必要な物品が手元にあり、人手も検査機器もある、慣れたスペースです。でも逆に患者さんの目線で考えると、病院は患者さんにとっては「アウェイ」ですよね。
患者さんが暮らす自宅や施設は文字通り、患者さんの「ホーム・安心できる本来の場所」で、そこでの療養を支える仕事はまさにそれぞれの患者さんに合わせた患者中心の医療です。入院中は、「家に帰りたいというけれどこの状態で在宅療養できるのだろうか?」と誰もが思っていた患者さん。食事をほとんど飲み込めなかったのに、自宅に帰ったら家族の介助で少しずつ食事ができるようになった、意欲が出て歩けるようになったということもよくあります。何よりも、自宅に帰ってほっとした明るい表情を見ると、本当にうれしく感じます。その人があるべき場所に戻ったような感覚です。    
もちろんうまくいくことばかりではなく、状態の悪化や介護困難もあります。どうやって今の状態を支えるか、これからどう過ごしていきたいかを本人、家族と話し合い、支える他のサービス事業所と連携して考えていきます。これが在宅療養の世界です。
病棟は基本、患者さんにとって治療の場であり、人手があり安全に療養する場所。入院患者さんがいずれ戻っていく家や施設がどのようなところか、その人の普段の暮らし方、家族や介護者の状況を実際に見て知ることは、病棟看護師として働くにもとても役立つと思います。入院中の課題だけではなく、その人の本当のゴールを考えた看護の展開に繋がるはずです。

画像

終末期を支え、自宅で看取る

画像

亡くなる時は病院、と多くの人は考えていると思います。ですが、この訪問診療の普及で住み慣れた自宅や施設で最期まで過ごすことができるようになりました。家で自分の好きなように過ごしたい、家族と過ごしたいという思いを支えます。
終末期の患者さんは体が辛いだけでなく、精神的にも不安や寂しさ、孤独感を抱えています。それを支える家族もとても大変です。自宅でも病院と同じように緩和ケアを行い、心身辛さを軽くし、患者さんや家族の気持ちを聴きながら、過ごし方や気持ちの持ち方などをアドバイスします。電話で家族の話を聞き、痛みのコントロールのための麻薬量の調整をし、介護の負担を軽くするために、福祉用具やヘルパーの導入をケアマネージャーに提案します。深く関わった分、亡くなったときはさみしい気持ちになりますが、家族が「家で看とることができてよかった」と話すことも多く、支えることができてよかったと思えます。看取り後の家族のグリーフケアを行うこともあります。コロナ禍に入り、患者・家族は面会制限のある入院を避ける傾向があり、訪問診療の看取りはますます増えています

画像

ママナースも働きやすい訪問診療

画像

賃金の面では、病棟看護師と比較すると夜勤がないので下がってしまいます。私はオンコールの手当があり、外来看護師時代よりは上がっています。基本が平日日中の勤務で、土日祝日が休みのため、家族や友人とも予定を合わせやすく、お子さんが小さいママナースも働きやすいと思います。外へ出る仕事なので、移動は車でも暑さ寒さ日焼け対策は必要です。診察介助がメインなので体の負担は少なめです。
在宅医療に興味があり、いつか訪問看護師をやってみたいという方にもおすすめです。訪問診療は医師と訪問するので安心感があり、在宅療養の雰囲気や在宅医の考え方を知ることができます。余談ですが、病院の外の空気を吸い、街の様子や四季の移り変わりを感じ、医師とおしゃべりしながら訪問するのもなかなか楽しいものです。どこにいても看護師は看護師ですが、患者さんや家族、多職種との密接な関わりもある、訪問診療の世界を一緒に見てみませんか?

どんな人におすすめ?どんな人に向いている?

画像
  • 在宅医療・高齢者医療に興味がある
  • 訪問看護をやってみたいが、まだ一人で訪問するのは不安
  • 夜勤や体がきつい仕事はしたくない
  • 土日は基本的に休みたい
  • 患者さんそれぞれの気持ちや願いをかなえるような医療に携わりたい
  • 緩和ケアや看取りにかかわってみたい
  • 多職種連携をしたい
  • 施設のことも知りたい
  • 診察に積極的に参加したい
  • 病院の外で活躍したい
  • 家族のケアもしてみたい
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

看護師歴20年、消化器内視鏡技師取得。病棟・外来・訪問診療・訪問看護を経て現在は病院の広報企画担当として勤務。趣味はヨガ。子どもたちが成人し、休日は夫と電車旅行やSUPを楽しんでいます。在宅療養やACP、平穏死についても発信していきたいと考えています。

目次