子どもが産まれて、一旦看護師の仕事をお休みしていたけれども、復帰するとなったときに訪問看護を選ぶ人も多いです。
しかし、病院で働いた経験だけでは訪問看護の役割や仕事のイメージがわかないので、飛び込んでみようか悩む人もいるでしょう。
在宅で看護をしていくに当たっては、自宅にあるもので代用してケアをしていったり、ご本人や家族の意向に沿った方法を考えていくなど、病棟のときとのやり方と違うことも多くあります。
それにより、訪問看護師になってから病棟での看護とのギャップに悩む人も多いです。
そんな方のために、訪問看護師の役割と仕事内容について解説していきます。また、病棟看護師との違いについても解説していくので、参考にしてみてください。
在宅生活を送る上で欠かせない存在!
訪問看護師の役割は、自宅で生活をしている人が安心して過ごせるように、身体状況の観察や医療行為を実施していきます。
ご家族やヘルパーさんには出来ない医療行為が必要だったり、状態が変化しやすかったりする方が在宅で過ごしていくに当たって、訪問看護師の存在は必要不可欠です。
また、自宅で過ごしている中での悩みやご家族の介護の相談にものり、必要に応じて多職種と連携して問題を解決していくこともあります。
訪問看護師の仕事内容
次に具体的な訪問看護での仕事内容について、ご紹介していきます。
訪問看護師の仕事内容には、以下のようなものがあります。
- 状態観察
- 環境整備
- 医療行為
- 療養上の世話(入浴介助、排泄介助、食事介助、移乗・移動介助など)
- 利用者さんやご家族への療養上のアドバイス
- ご家族への介護指導
ひとつずつ、どのような内容なのかご紹介していきます。
異常を早期発見と相談相手にも
訪問看護師の大事な仕事内容と言えるのが、状態観察です。
訪問時の様子で異常の早期発見と状態の改善や悪化予防のアドバイスをしていきます。
訪問時のバイタル測定や疾患の症状の有無などはもちろんですが、前回の訪問からのご様子や困りごとなども含めて聞き取りを行っていきます。
そして、最終的なアセスメントをしてケアを行ったり、指導やアドバイスを実施していきます。
ごみも片付けて衛生に
環境整備は、看護師として大事な仕事内容に含まれます。
訪問させていただくお宅の中では、料理や食事の提供はヘルパーさんが行なってくれますが、その後食べ終わるまで待たずに退室することもあります。
その場合、食べたあとのお皿がそのままテーブルの上に置いたままになっていることもしばしばです。
また、私が訪問していた時にあったケースとして、ゴミ箱がいっぱいのままになっていたり、認知症の人によっては自分で処理しようと、ゴミ箱に便が捨てられているといったこともありました。
このような場合、食べた食器がそのままになっていたら、流しにもっていき水に浸して置いたり、ゴミ箱がいっぱいになっていたら、まとめておくなどして衛生環境を整えることも訪問看護師の仕事です。
もし、ご自宅の衛生環境を保つために外部の手を借りて、掃除機をかけたりほこりを取るなどの作業が必要だと感じた場合には、ケアマネージャーに相談するのも訪問看護師の役割のひとつになります。
処置や機器使用を患者・家族に指南 やさしく丁寧に
訪問看護では、以下のような医療行為があります。
- 血糖測定
- インスリン注射
- 胃ろう、経鼻栄養などの経管栄養管理
- ストマ管理
- バルーンカテーテル管理
- 注射、末梢点滴、採血
- 褥瘡などの創処置
- 在宅酸素管理
- 内服管理
- 人工呼吸器管理
- 腹膜透析
- 中心静脈栄養(CVポートを含む) など
行なっている医療行為の内容としては、ほぼ病棟勤務と同じです。
在宅の場合、基本的には本人や家族が中心に、行なっていくことになります。
ご自身で問題なくできるようになり、訪問看護師は医療従事者として、異常がないかなどを確認するだけが理想的です。
そして困っていることなどがあれば、アドバイスもしていきます。
例えば、バルーンカテーテルで尿が一時的にでなくなってしまった場合や尿が漏れてしまった場合です。特に、ご家族が心配されます。
そんなとき、バルーンカテーテルが体の下になっていないかなどを、まずは確認してみるように伝えていきます。
看護師には、当たり前のことですが不慣れなご家族やご本人は見落としがちです。
したがって、心配や困っていることが合った場合、日ごろ看護師が意識してやっていることをアドバイスすることで解決されることも数多くあります。
また、利用者さんやご家族からの悩みや相談に対して、看護師としてアセスメントをしたうえで、療養上のアドバイスをしていくことも、訪問看護師の役割のひとつです。
病院受診後で血液データなどがある場合には、それを見ながら食事指導などを行っていきます。また、家に閉じこもりがちの人の場合には、外に出る機会を作るアドバイスなども行なっていきます。
求められる看護の視点での観察
療養上の世話は訪問介護で行われることが多いですが、状態変化を起こしやすい方の場合、看護師の視点で観察しながら入浴などの介助して欲しいという利用者さんの依頼も多いです。
そして、看護師の視点でアセスメントし、アドバイスをしていくこともあるでしょう。
例えば、利用者さんによっては、褥瘡のなりかけや転倒によってできた傷などがある場合があり、処置の方法や日ごろのケア方法などをアドバイスしていくことがあります。
アドバイスをすることで、なりやすかった褥瘡が出来なくなったり、なかなか改善されなかった傷が改善されてきたりすることで、ケアマネやご家族から感謝の言葉をかけられることも多いです。
そして、それがやりがいに繋がる訪問看護師もいます。
家族を支えて患者を支える
訪問看護は、週に1〜2回、多くても3回が一般的な訪問回数です。
医師から点滴や重度の褥瘡処置、ターミナルなどで毎日状態観察が必要な人には特別訪問看護指示書というものが交付され、毎日訪問することもあります。
しかし、基本的には週に1〜2回、しかも30分〜1時間程度しか看護師は携わりません。
訪問看護師が訪問する時間以外は、ご家族が基本的に介護することが多いです。
そのため、介護をしているときに悩みや問題も出てきます。
たとえば、手引き歩行や体位変換、車いす移乗を負担に感じられたり、認知症の方の不穏時の関わり方などで悩まれるご家族も多いです。
そんなとき、利用者さんの状況や状態に合わせて、アドバイスをしていくこともあります。
介護が大変で、介護用品などを取り入れた方が良いと判断した場合は、ケアマネージャーに提案をすることもあります。
在宅サービスの訪問介護や訪問看護は制限なく利用できるわけではなく、介護保険の制度上、利用できる回数に限り(限度支給額)があります。
また、ご家庭の経済的状況から、必要最低限の介護サービスしか使えないこともあるでしょう。
そのためケアマネージャーからは、状態観察に加えておむつ交換や入力介助などの身体介護をお願いされることもあります。
まとめ
訪問看護師は、在宅医療では欠かせない存在となっています。
利用者さんの状態変化があったときに、家族やケアマネからまず頼られるのが訪問看護師です。そのため、プレッシャーが大きくのしかかることもあります。
また、医療知識以外に介護保険の知識が必要だったり、利用者さんメインの場なので臨機応変な対応を求められる部分では、大変なことも多いです。
しかし、利用者さんやご家族の近くにいるからこそ、やりがいを感じる部分も多くあります。
ぜひ、訪問看護師として働いて、訪問看護の魅力に触れてみてください。