訪問看護に転向する際、気になるのが給与ではないでしょうか。
夜勤がないのが訪問看護の魅力ではありますが、その分お給与が減ってしまうのか心配ですよね。
今回は実際の訪問看護と、病院との給与の違いや、訪問看護の手当について紹介します。
病院勤務より少ないといわれる訪問看護のお給料
訪問看護には興味があるけれど、夜勤がない分お給料ってどうなの?って気になりますよね。
少し古いデータですが、日本看護協会が平成23年7月13日 (医療計画の見直し等に関する検討会)において、【訪問看護の伸び悩みに関するデータ】を示しています。その中に病院(n=2,499)と訪問看護ステーション(n=317)の給与の比較がありました。訪問看護は病院に比べ、1ヶ月の基本給額は-9,994円 、1ヶ月税込み給与総額で-40,373円、年間賞与額で-134,333円、年間給与総支給額では-618,809円 となっていました。基本給は1万円弱の差ですが、年収になると60万円以上の差が出てしまうようです。
現在は看護職全体における賃金見直しの必要性が言われています。また、訪問看護ステーションの数も増え、看護小規模多機能型居宅介護など、当時にはなかった訪問看護師の活躍の場もできています。最近の看護師の勤務場所の違いによる給料比較の資料はありませんが、病院との差が縮小しているといいですね。
知っておきたい訪問看護手当あれこれ
訪問看護は基本的に平日昼間の勤務で、カレンダー通りに運営されていることが多いです。土日祝日がお休みなのは魅力的ですよね。とはいえ利用者さんとそのご家族の生活にお休みはないので、土曜日や祝日は休まない所もあります。そして祝日昼夜を問わず、何かあれば対応できるように、緊急対応する体制をとっています。
それでは訪問看護ステーションの手当には、どのようなものがあるのでしょうか?
こちらも事業所により多様ですが、代表的な手当として休日手当、オンコール手当があります。私が働いたところでは、祝日か運営日であるなしにかかわらず、休日出勤すると休日手当がつきました(休みを優先したいときは代休)。オンコール手当は、夜間の緊急対応をおこなうため当番制で持つ携帯電話当番の手当です。電話相談で終わることもありますが、緊急訪問を行うとオンコール手当とは別に夜間緊急訪問手当の加算がありました。その他には、業務手当、エンゼルケア手当などがあります。
非常勤なら好条件なことも
訪問看護は非常勤なら比較的柔軟な働き方が可能です。自分自身や家族の生活スタイルに合わせて、勤務日や勤務時間を選択することができます。オンコールや休日出勤を免除されるので、幼い子どもがいる看護師にとっては働きやすい職場と言えます。ブランクがあっても、自分のペースで仕事量を調節していくことが可能です。
また非常勤の給与は、時給や歩合給等があります。私が非常勤で働いたときには歩合給でした。訪問実績によって給与が決まるのは、月々の手取りが一定せず不安定です。反面、がんばればがんばるだけ得るものが多いので満足度は高いです。各ステーションにより給与体系が異なるので、働く上での優先度に照らして十分検討することをオススメします。
ステーションによって給料幅が大きく異なる要因
訪問看護ステーションの給料幅の理由として、開設主体とステーションの規模が影響していると思われます。開設母体により給与体系が異なり各種手当ても変わります。特に、給料に大きな影響を与える手当は休日手当やオンコール手当なので、転職をお考えの方は十分に情報収集しておくことをオススメします。
訪問看護ステーションは、その支出の80%が人件費であり、小規模事業所ほど赤字の割合が高くなるとの報告があります。私は過去に開設母体が異なるステーションで働きましたが、基本給は大幅に増えたのに、ボーナスがかなり少なくオンコールもなかった分、年収は下がってしまったという経験をしました。また、転職すると、しばらくはボーナスが支給されません。そのため転職1年目は支給額が少なくなり注意が必要です。ところで、訪問看護師へ転向しやすくするために、転職1年目からボーナス保証をしているステーションもあるようです。
訪問看護ステーションの開設主体は「営利法人(会社)」が最も多く、医療法人が続きます。次いで社団/財団法人、社会福祉法人、独立行政法人、協同組合、NPOなどがありますが、割合としてはそれぞれ10%未満です。また、開設主体の割合の変化を平成24年と令和3 年(各 10 月時点)で比較してみました。「営利法人(会社)」が32.6→59.2%に、「医療法人」は36.0→21.9%に、「社団・財団法人」12.0→6.7%に、「社会福祉法人」 8.1→5.7%という結果でした。開設主体の割合が変化したことにより、給与がどう変化したのか興味があるところです。
今後訪問看護の需要は増える一方です。診療報酬、介護報酬の増加、加算の追加が給与にも反映されることを期待したいと思います。
(出典:厚生労働省「平成24 年、令和3介護サービス施設・事業所調査」)
訪問看護のお給料事情のまとめ
訪問看護師の給与は、病院勤務と比べて一般的に給与が低い傾向にあるようです。しかし統計が発表されたころと比べ、社会情勢が変わり、訪問看護ステーションの開設主体も変化しているため一概には言えません。
給与は、開設主体やステーションの規模(職員数や利用者数)、経営状態によって大きく異なります。
訪問看護でも手厚い手当があると、病院と比べてそれ程大きな差はないと思われます。
(ライター:青木 容子)