新しいことに挑戦したい、夜勤をしたくない、家族との時間や自分の時間を大切にしたい…。
色々な理由から訪問看護の世界に興味を持たれた方も多いと思います。しかし病院勤務と働き方が違うためどんな仕事内容なのかがイメージしづらく自分にできるのか、不安に感じる方もいらっしゃるでしょう。
そこで今回は訪問看護の仕事内容、特にどのような患者さん(利用者さん)に訪問するのかに注目してみました。
訪問看護の対象者
結論からいうと、「乳幼児から高齢者まで」が訪問看護の対象者です。
年齢を問わず在宅にて病気や心身の障害などにより医療的、療養的支援を必要としている方で、かかりつけ医から訪問看護が必要と認められ、指示書の交付を受けられた方が対象となります。
例えば医療的なケアが必要な方や障がい児(医療的ケア児)や精神障がい者、病気や障害などで要介護となった高齢者などとなります。
また、利用者だけではなくご家族の介護相談や健康相談にも応じます。
ご家族の介護に関する心配事や利用できるサービスなど、他業種と連携して支えていくことも訪問看護師の大切な役割です。
様々な生活環境で提供する看護
一口に自宅へ訪問といっても生活環境はさまざまです。住居も一軒家やアパート・マンション、時には施設に入所している方のところへも行きます。
普段生活しているスペースなのでその人の生活状況が一目でわかります。中には多くの物がそのまま床に置いてあったり、ゴミが散らばっていたりと必ずしも清潔といえない環境で生活してる方もいらっしゃいます。時にはスリッパを持参したり、汚れを次のお宅へもっていかないよう極力自身が持ってきた荷物を床に置かないようにするなど工夫が必要となります。また、ペットを飼っている家もあります。もし動物アレルギーなどがある場合は事前に所属長に知らせておくといいでしょう。
私の事業所では社用車で移動するので駐車場の確保も大事な課題です。30分や60分などまとまった時間駐車しますので、集合住宅や施設など駐車場が厳密に決められているところだけでなく、個人宅でも駐車できるスペースについては事前に確認しておきましょう。
また独居や老夫婦二人、子ども家族と二世帯住宅で同居など家族構成もさまざまです。
訪問看護の大半は介護が必要な高齢者
訪問看護は年齢問わず利用することができますが、訪問看護の利用者の7割近くが介護保険を利用していると言われています※
訪問看護では主に中重症度の要介護者の医療的援助(注射や内服管理、褥瘡処置や排便管理など)や後遺症のある方の廃用症候群予防のためのリハビリテーションや生活援助、終末期の方のご家族を含めた看取りの看護など様々です。
高齢者は主疾患以外にも内服している人が多いのですが、確実な内服や糖尿病のインスリン注射が難しいことが多いので確実な投与のため薬の量や形態、ご本人の使いやすさに応じてお薬カレンダーやボックスの利用、設置や内服セット、インスリン注射は介助や手技の見守り、指導を行っています。他にも食事の状況確認や助言、日頃の運動が少ない人にはリハビリをしたり、体の心配なことや生活の困ったことなどの相談にも応じています。高齢者のお宅へ行った際はご本人の体のことはもちろん中心ですが、同居のご家族も高齢の場合はご家族の状況も観察し、必要時はアドバイスもしています。
※平成28年介護サービス施設・事業所調査の概況
2 居宅サービス事業所の状況(訪問看護ステーション)
診療科目に特化したステーションもある
中には次にあげるような対象者も増加傾向にあり、事業所によっては専門性に特化したステーションがあります。しかし、経験がなければ採用されないわけではなく、希望すれば経験がなくても同行訪問など学びながらスキルアップを目指すことが可能です。逆に、精神科や小児科などは不安がある、自信がないという方は、これらの訪問が少ない事業所を選ぶことも可能です。就職の際は事業所の特徴を十分に確認した上で慎重に選びましょう。
神経難病
神経難病には、パーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症、多発性硬化症などがあります。神経系が障害される希少疾患のうち原因がはっきりわかっておらず、有効な治療方法がないため、長期の療養が必要です。徐々に機能が低下していくので日々変化していく心身の状態を観察し、自宅で生活しやすくするために機能訓練をしたり、医療機器の使用をしたりしています。利用者に応じた細やかな支援を行っていく必要があります。
入浴介助や服薬管理が多いですが、訪問リハビリを利用されている方も多いのでPTやOTにリハビリ内容の助言を受けながら生活環境を整えたり、移動の練習をしたりしました。また生活支援のヘルパーさんとの連携や定期受診時には家族とコミュニケーションをとりながらご本人が望む在宅生活ができるだけ長く継続できるように援助しています。
神経難病は若くして発症し徐々に病状が進行する方もいるので身体だけでなくメンタルのサポートも必要になります。
ALSの患者さんの訪問に週に1回連続して訪問していました。その人の生活ペースに合わせ寄り添ったケアを行なっていました。ご本人のペースに合わせて関わるため慣れることも必要だと思いました。
神経難病の方は長いお付き合いになることが多いので、焦らずにじっくりとコミュニケーションをとっていく中で、喜んでもらえたり、笑い合うことができたときなどはとてもうれしくやりがいを感じることができました。
小児科
現在、医療の進歩により重い障害があり医療的ケアが日常生活に必要な「医療的ケア児」も自宅で過ごすことができるようになっています。小児に対する訪問看護では医療的介入はもちろん、ご家族にケア方法を指導したり、精神的な支えとなることも大切です。その他学校や病院、地域の福祉サービスと連携したサポートを行うのも、大切な役割のひとつです。
私が関わった患児は遺伝子異常の疾患があり、常に低酸素のリスクがあり、緊張しました。
医療的ケア児の看護には人工呼吸器の管理や経管栄養、吸引のケアや入浴介助もあります。小児の看護は家族への負担も大きいので家族から日ごろの状況を聞いたり、ケア中に家事などができるようにしていたり、または長い時間を使って介護者のレスパイト支援もしています。
子どもの訪問は、状態が改善しないことが多くお母さん始めご家族の精神的なサポートが必要だと思います。しかし例え病気があったとしても、成長の様子を一緒に確認し、少しずつでも成長していることを確認しあっていました。子どもたちの成長する姿を見られたのはとてもよかったです。
精神科
精神科訪問看護は、統合失調症やアルコール依存症など精神疾患のある方、うつ病など心のケアが必要な方が対象です。主に病状の観察を始め、生活リズムを整えるための生活援助、服薬管理、家族のサポートが目的となります。服薬に関しては受診日までに十分な薬はあるか、正しい用法で内服しているかも確認します。病棟のように毎回チェックすることはできないのである程度の信頼は必要ですが、定期的に確認が入ることで正しい服薬を意識付けしてもらう形になります。精神疾患の内服管理をきちんとしないと、精神的な安定が保たれないので攻撃的になったり無気力になったりで何も進まない印象がありました。実際に訪問時に拒否されお宅に入れなかったり、急に休みの連絡が入ったりと十分な訪問が難しいときもあります。そのため日ごろからのコミュニケーションと適切な内服が重要だと感じています。
まとめ:病棟勤務とはまた違った訪問看護の魅力
訪問看護は利用者の生活拠点である自宅で看護業務にあたります。年齢や基礎疾患、家族構成など色々なお宅を訪問します。病棟での看護とのギャップはあると思いますが、今までの経験も活かせますし最初は同行訪問で経験を積むことも可能です。初めは初対面のお宅に訪問するのは不安も大きいでしょうが、慣れてくると病棟勤務とはまた違った訪問看護の魅力に気づくと思います。