ヘナという植物を使って肌を自然に染めるヘナアート。10日程度で消えますが、その見た目からヘナタトゥーとも呼ばれています。
ヘナアートで患者さんの心を支えたい、ポジティブに生きるきっかけにしてもらいたいと活動している女性がいます。ヘナアーティストとして活動する看護師の戸田ゆかり(ぱぴこ)さんです。ヘナアートで医療現場を盛り上げたいという戸田さんの思いをお届けします。
この記事はYouTubeの「ナース図鑑LIVEnow」のインタビュー動画をもとに、ナースLabのライターが作成しています。
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親子の絆をきっかけに感じたアートの可能性
-これまでの経歴を教えてください。
新卒から総合病院で3年間勤務し、循環器内科とICUの混合病棟を経験しました。奨学金の完済をきっかけに転職し、透析クリニックで1年勤務。その後は、結婚を機に透析外来に移って2年間勤務しました。現在は整形外科病棟で働いています。病棟での勤務の傍ら、ヘナアーティストとしてヘナアートを広める活動をしています。
-ヘナアートについて教えてください。
日本ではヘナというと、髪のタンパク質と合わさって染色されるヘナカラーに馴染みがあるのではないでしょうか。それを肌に応用したものがヘナタトゥーです。ヘナという植物の葉を粉末状にし、水で練って肌に乗せて絵を描く。自然に肌を染めるボディアートの一つです。
一見タトゥーに見えるのでヘナタトゥーとも呼ばれています。インド発祥の伝統的な民族文化の一つで、インドではメヘンディ(ヒンディー語で肌を染めること)と呼ばれています。1つ1つの絵柄に意味がある、メッセージ性の強いもので、消えると願いが叶うと言われています。たくさんの意味があるので願いを込めながら描いています。最近は日本でもファッションとして人気が出ていますね。タトゥーと聞くと、痛みがあるのではないか、消えないのではないかと心配されがちですが、全く痛みはありません。表皮だけを染色するので、肌のターンオーバーとともに、7〜10日程度で自然に消えていきます。
-なぜヘナアーティストの道を志したのですか?
元々、ヘナアートは趣味でやっていました。広めたいなと思ったエピソードがあります。
息子が1歳の時に肺炎で入院しました。ぐったりしていて笑顔もなく苦しそうな息子。私は看護師なのに母になると何もできず、すごく焦っていました。無力感を感じていました。そんな中、息子の手には2-3日前に一緒に遊んだヘナアートのイラストが残っていたんです。入院中、私の知らないところで息子がそのイラストの事を聞かれて嬉しそうにしていたというエピソードを聞いて、「アートってすごい力があるんだ」と感じました。ただの線だけど、その線には思い出やつながりが残る。そしていつでも見ることができる。絵とはまた違うヘナアートの可能性を知って、これってもっと医療現場で活かせるんじゃないか、苦しんで闘っている子どもたちや患者さんのメンタルケアに活かせるのではないかと感じたんです。
初めて息子と何日も離れることを経験した中で、アートに自分も救われてアートの可能性を知ったことが医療の世界に広めていきたいと思うきっかけにもなりました。
-実体験からきている看護とアートへの思いがあったんですね。
看護って発想力が大切だと思っています。基本的な手技や技術はあるにしても、そこから対象者にどう応用していくかというところがすごくアートっぽいなと思っています。
「ヘナアーティスト×看護師」としてクリエイトするライフスタイル
-病棟勤務とヘナアーティストの両立は忙しそうですね。今はどんな働き方なのですか?
今は週4日間、整形外科病棟の看護師として日勤常勤という働き方をしています。残りの週3日はヘナアーティストとしての活動にあてたり、休暇にしたりしています。ヘナアーティストとしてはフリーで活動しており、インスタグラムや公式LINEにて情報発信や活動を紹介しています。予約や問い合わせもそちらから受け付けています。
-週4日間で常勤という働き方はめずらしいですね。その働き方を見つけたきっかけがあったのでしょうか?
現在の職場を探すにあたって、なんとなく「もっと違うこともやりたい」という思いがありました。育児もあったので、働き方のバリエーションがある病院を探したのがきっかけです。入職前に週5日以外の働き方があるのか、雇用条件の確認、週4日勤務でも福利厚生が守られるのかなど、気になる点はしっかりと確認して納得してから入職しました。
-オフの日はどんな風に過ごしているんですか?
家族の日を決めていて、その日は外で自然に触れることをテーマにしています。現在は鎌倉在住なので神社仏閣も多く、低い山も多いので家族で散歩したり、ハイキングに出かけたりしています。ありがたいことに海も山もあって、四季折々の自然から五感の刺激をたくさん受けられるので私自身も成長させられているなと感じています。
広げていきたい、アートの無限の可能性
-今後の展望について教えてください。
医療の最前線にもっとアートを取り入れて、病と闘う方や心に痛みを抱えた方の支えとなる事が最終目標であり、私の夢です。そのために今少しずつ、ヘナアートをいろいろな人に広める活動をしています。
-特に力を入れている分野などはありますか?
マタニティヘナは今後もっと頑張りたいなと思っている分野です。描くのに3時間程かかるのですが、妊婦さんにとっては限られた妊娠期間10カ月のうちのすごく貴重な3時間となります。妊婦さんは不安や葛藤などいろいろな感情を抱きやすいです。胎動を感じながら自分自身と向き合ってゆったりする時間を持って欲しいなと願いながら活動しています。
-ヘナアートをやりたい方へのメッセージをお願いします。
アートはヘナに限らずすごい力を持っていると思います。紙と鉛筆からはじめられて、ペンを持つことができる子どもからお年寄りまで心も思いもつながります。
私はアートの可能性をすごく感じています。医療現場だけでなく、私たちの心の支えになったり、ポジティブに生きるためのきっかけになればいいなと思っています。ヘナアートをやったことのない方は是非体験してみてください。
インタビュアー:斎藤利江
ライター:Yukako