看護師はまだまだ女性社会であり、妊娠・出産を経験する人も多いです。順調な経過をたどる人もいますが、ひどいつわり(悪阻)や切迫早産など様々なトラブルを抱える人もいます。
特に看護師は心身ともに負担が大きいため、リスクも高くなります。筆者も一人目の時はつわりや切迫早産で3回入院し、出産時は緊急帝王切開となるなど、スムーズではありませんでした。
筆者の経験も踏まえ、妊娠前や妊娠初期から知っていた方がよい制度などをご紹介していきます。
妊娠中の身体の変化、勤務をどう乗り切る?
人によって妊娠中はとても辛いと感じる場合もあります。とくにつわりは常に二日酔いのような状態で、終わりの見えない症状は精神的負担が大きいものでした。
特に、食事介助やオムツ交換などにおいのキツイ業務はつらかったです。
また、看護師の切迫早産率はとても高く、前職の病院では産科の個室7割が看護師の切迫早産の入院で埋まっていたというエピソードもありました。
立ち仕事や前傾姿勢になることが多く、他職種との板挟みになるなど心身への負担が大きい業務はそのような異常な状態のリスクを高めてしまいます。
自分は無理しているつもりがなくても、胎児を抱えている時点で身体の負担になっていることを忘れてはいけません。
様々なトラブル時に使える制度が労働基準法や男女雇用機会均等法などです。
母体の負担を減らすため、仕事内容を軽くしてもらったり、残業や夜勤を免除してもらったりすることができます。
あまり認知されていませんが、医師の指導があった場合は、勤務時間の短縮化や休憩時間を増やすことも可能です。働くのが辛いと思ったときには母子手帳にある、母性健康管理指導連絡カードをチェックしてみてくださいね。
参考:厚生労働省「働く女性の母性健康管理措置、母性保護規定について」
時間短縮はもらえる手当が減っちゃう!?
先ほど紹介した制度で、勤務時間の短縮や休憩時間の延長などありましたが、利用する場合は少し注意が必要なんです。
当たり前のことですが、勤務時間が短くなると、お給料もその分減ってしまいます。
実は、産休以降にもらえる各種手当金は月給(正しくは標準報酬月額)をもとに、受給額が決められます。なので、出産前の収入が少なくなれば、その後もらえる手当金も減ってしまうというわけです。
出産手当金は産休前の12か月分の標準報酬月額(通勤手当や残業手当など各種手当や年4回以上支給される賞与も含みます)
育児休業給付金は6か月分の標準報酬月額をもとに計算されます。
実は、欠勤となった分は、日数によっては標準報酬月額の計算にカウントされないことがあります。なので、勤務時間を減らして頑張って働く他にも、症状がつらければ思い切って仕事を休んでみたほうが、その後の手当金をより多くもらえるという場合もあるんです。
【育児休業給付金の標準報酬月額の計算イメージ】
極端な例で作ってみましたが…
【出産手当金と半年分の育児休業給付金の金額イメージ】
そして、仕事を休んだ時は健康保険が大いに役立ちます。
妊娠中のトラブルで入院した場合は、保険適応の診療にかわります。高額療養費制度などを利用できれば家計の負担も少し減りますね。帝王切開など普通分娩以外の出産も同様です。
さらに、欠勤が4日以上になれば傷病手当金も申請できるので、意外ともらえるお金は多くなります。
産休中の出費で慌てないために
出産予定日が近づき、本格的に準備が始まる産休中は、予想外の出費が重なります。
育児用品の準備もそうですが、産休って出産前は6週間、出産後は8週間(多胎は産前14週)休むことができます。フルタイムで働いていると、こんなに長い休みはなかなか取れないので、外出する機会も増えます。筆者も今まで会えなかった友達と遊んだり、1人買いものを堪能したりしていました。
切迫で入院していても、正期産に入る37週を過ぎれば安静解除となるので反動で遊び回っていました。ただし、すぐにむくんだり、疲れたりしやすいのでその辺は注意が必要ですね。
一番驚いたのは、産休期間中は逆に職場から赤字明細が届いたことです。会社員は基本的には住民税の支払いが毎月あるため(特別徴収のため)、請求されます。
親切なところですと、産休前に一括支払いになるか、その都度支払うかなど説明がありますが、私がいた職場では説明されなかったので、油断していました。
住民税の他に、親睦会費や看護協会費、共済掛金なども復帰するまで請求となりました。
収入源がない間に出費が増えるため、心もお金も準備が必要です。
ちなみに出産手当金をもらえるのは出産後1~3カ月後です。筆者は分割請求時は出産後1カ月、3カ月後に振り込まれ、一括請求時は2カ月後に振り込まれていました。
なので、このような手当金は申請してもすぐには振り込まれず、時差があることにも注意しましょう。
妊娠~出産の経過は個人差がとても大きく。自分が抱えるつらさは他の人にはわからないものです。特に独身の頃は大変なんだなくらいしか思いませんでしたが、実際に体験すると想像を絶するつらさもありました。
仕事が忙しいときはつらいと言いにくいでしょうが、同僚のためにも自分の状況を積極的に伝え、何かあっても対応できるようにしましょう。あなたがいなくても業務は何とかなりますが、母体はたった1つです。自分の身体も守り、後悔しないマタニティライフを送ってくださいね。