結婚や出産を機に現在の仕事を辞め潜在看護師になったり、常勤から非常勤勤務に雇用形態を変更したり、看護師にとってターニングポイントになりやすい妊娠や出産。しかし、「家計が苦しい」「毎月赤字でこれから子どもを育てていけるのか不安」と感じる方もいるのではないでしょうか。
これから、妊娠~育休に考えたいお金について全3回に分けて紹介していきます。第1回目は「妊娠から出産までかかるお金」について。妊娠経過や分娩方法によっても総額費用が変わってくるので、事前に確認してみましょう。
妊娠中にかかる費用
妊娠が発覚して、出産までに必要となる大きな費目としては
- 健診費用
- マタニティ用品
- ベビー用品準備費
- 妊娠中のトラブル時の通院・入院費用
などがあげられます。どのくらいかかるのか具体的に見ていきましょう。
健診費用
妊娠期に母体と胎児が健康に過ごしていくために、出産まで平均14回の妊婦健診を受ける必要があります。しかし、妊娠・出産に関する費用は健康保険の適用外となるため、基本的には全額自己負担となります。妊婦健診の負担が大きいとのことで、今では約14回の健診費用が公費で助成されるようになりました。
私の場合、自己負担額の総額は約2万円でしたが、医療機関によって健診回数や費用が変わるため、余裕を持って健診費用を準備しておくと安心です。また、助成上限額や回数などは自治体ごとに異なるため、確認しておきましょう。
ベビー・マタニティ用品費用目安
今回、この記事を書くためにベビー・マタニティ用品の総額費用について知人家庭へインタビューをしてみました。Aさん宅は合計で7万4500円。お祝いで肌着やベビーカーをいただくなどしたため、比較的費用を抑えることができたそうです。
我が家の場合は、生まれてくる子どもの姿を想像すると可愛くて、新品の洋服やおもちゃなどを多く購入したこと、ベビーカーやチャイルドシートなどの購入が必要だったこともあり、合計10万円8700円でした。
このように各家庭により費用は異なりますが、新品で揃えようとするとあっという間に10万円を超えてしまうこともあります。
表1:ベビー用品費用(筆者作成)
表2:マタニティ用品費用(筆者作成)
長女が生まれる前は「赤ちゃんと言えばスタイ」のイメージが強く、自分で作ったほかにプレゼントでもたくさんスタイをいただいたのですが、吐き戻しやよだれが少ない子だったので使う機会が少なかったです。さらに、準備していた新生児用おむつも素材が肌に合わず、無駄になってしまったこともありました。
子どもによっても体質が違うことや、すぐにサイズオーバーとなり想像していた以上に使える期間が短いなんてことも多いため、新生児用品の準備は必要最小限にとどめておくと良いでしょう。賢く準備していくためには使う期間をよく考え、レンタルを検討することもオススメです。
また、マタニティ用品に関して、産褥ショーツや産褥用パッド、母乳パッドなど入院時にもらうお産セットに含まれていることもあります。入院前に配布される出産準備リスト等と照らし合わせながら購入できると良いでしょう。
妊娠中のトラブル時の通院・入院費用
妊娠中は順調に過ごせればいいのですが、予期せぬトラブルが起きることもあり、妊婦健診を受けた後に緊急入院となるケースもあります。
基本的に妊娠・出産は健康保険適用外ですが、重度の悪阻(つわり)や切迫流・早産などの理由で医療行為が必要な検査・入院等は保険適用となり、自己負担は3割になります。ただし、入院費用の中にも保険適用と適用外の範囲があり、差額ベッド代や食事代、検査等の内容によっては自費が増える点には注意が必要です。
また、医療費だけではなく、家族の生活費や面会時の交通費などによる支出の増大、働けなくなることによる収入減少なども予測しておけるとよいでしょう。
分娩・入院でかかる費用
分娩・入院費用の平均額と実際は?
厚生労働省の令和元年度の集計結果によると正常分娩で出産の場合、出産費用の妊婦負担額の全体平均は52万4182円です。私は、妊娠する前は出産にはあまりお金がかからないイメージでいました。
というのも出産育児一時金が、子ども1人につき42万円支給されるという話を聞いていたからです。自己負担額は5万円くらいだろうと思っていたのですが、実際にかかった費用は17万2700円となり、退院時に窓口で驚いたのを覚えています。この記事を書くに当たり、再度領収書を出して自己負担額が予想よりも多くなった理由を考察してみました。
- 骨盤が狭く安全に出産するために妊娠38週目で誘発分娩となり、自費での検査・処置費用や投薬料が発生した
- 新生児管理保育料のほか処置・検査費用等の自己負担があった
- リサーチ不足のため、差額ベッド代が平均より高額だったことに気が付かなかった(1万5000円×6日間=9万円)
入院費用の中には入院料、差額ベッド代、分娩料、新生児管理保育料などが含まれており、施設や分娩方法等により金額は変わります。また、夜間や休日の出産は医療費の加算があることも覚えておくとよいでしょう。
帝王切開など医療行為が入った場合
妊娠経過も良好で出産もスムーズにいけば良いですが、帝王切開など医療行為が必要となる場合もあります。例えば帝王切開の場合、手術費用や入院日数が長くなることから、総額費用は普通分娩より10~30万円程高くなると言われています。
しかし、帝王切開は保険適用となり、また、後述する「高額療養費制度」の対象にもなるため、普通分娩よりも自己負担額が抑えられる場合があります。
出産費用の負担が抑えられる制度
妊娠から出産までまとまったお金が必要であることが分かってきました。出産費用の準備が十分にできず不安に思う方もいるかもしれません。先述しましたが、ここでは出産費用の補助をしてくれる制度をご紹介していきます。
出産育児一時金とは
出産育児一時金は高額になりがちな分娩・入院費用を加入中の健康保険から一部負担をしてくれる制度です。妊娠4ヶ月以上の出産時に子ども一人につき42万円支給されます。
(参考:子どもが生まれたとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会 )
ただし産科医療補償制度※に加入していない医療機関又は在胎週数22週未満の分娩の場合は40万8000円となります。
※産科医療補償制度とは医療機関が加入する制度で、万一分娩中に脳性まひとなった場合に赤ちゃんとご家族の経済的負担を補償する制度(参考:産科医療補償制度 )
図1:出産時の支払いイメージ
高額療養費制度とは
1ヶ月の医療費が自己負担額の限度額を超えた場合に、加入中の健康保険から払い戻される制度です。帝王切開以外にも、妊娠中のトラブル発生時の入院や通院でも適用されるケースがあります。
医療費が高額になることが予想される時は、事前に健康保険組合(職場の担当部署など)や役所へ「限度額適用認定証」の交付を申請しておきましょう。認定証を医療機関窓口で提示しておけば、支払い時に限度額を超えた場合にも、自己負担限度額のみの精算となるため、積極的に活用してほしい制度です。
退院まで間に合わなかった場合でも、窓口で全額支払った上で後日、高額療養費の支給申請ができます。申請から数か月後に自己負担限度額を超えた分が支給されます。
(参考:高額な医療費を支払ったとき | こんな時に健保 | 全国健康保険協会 )
図2:帝王切開時に手術代、入院料、投薬料が合計60万円だった場合の支払いイメージ
その他に活用できる制度
出産費用や医療費が高額になった場合に活用できる制度として
- 健康保険組合独自の上乗せ給付制度(付加給付)
- 任意で加入している民間の医療保険
などもあるため是非調べて準備しておくといいですね。
まとめ
妊娠出産にはまとまったお金が必要ということが分かってきました。分娩方法によってかなり金額に差があるため事前に調べておくと安心できるのではないでしょうか。妊娠中の方はもちろん、妊娠が分かった時点でさまざまな可能性があることを視野に入れて準備を進めていけると良いでしょう。
(監修FP高梨子あやの)
ナースバランス研修室のメンバー募集中です。
こちらからLINE登録を!↓